2019年11月25日

猫の幸せを考えたらトイレの開発に行き着いた! 世界初、AI技術搭載の猫用スマートトイレ「toletta」が猫を救う

猫の寿命が長くなったことで嬉しい反面、病気になる猫も増えてしまった現代。なかなか人間が健康管理できない領域に、世界初のAI搭載、スマートトイレでソリューションを提供する「toletta」。開発を手掛けた株式会社ハチたまの代表取締役、堀宏治さんにお話をお伺いしました。


家族の一員となるペットととして、根強い人気の犬や猫。最近では、どの世代でも飼いやすく散歩が不要といった点から、猫を飼う人が増えているそうです。昔と違って家の中で飼われるようになったことで、寿命も長くなった猫。しかしながら、寿命が延びたことで健康面での変化が見られ、医療の介入が必要となる猫も増えてきました。

そうした背景の中で、猫の健康状態を管理する上で特に重要となるのが、猫の体重やおしっこの管理。そうしたデータをスマホで確認できるトイレを開発し、Amazonの猫用製品ランキングで瞬く間に1位を獲得したのが「toletta(トレッタ)」です。

今回はこの製品を開発・発売した、株式会社ハチたまの代表取締役、堀宏治さんにお話をお伺いしました。

猫の健康のためにAI搭載トイレが必要なのはなぜ?

株式会社ハチたま 代表取締役 堀 宏治(ほり・こうじ)さん

NTTデータで病院情報システム開発に10年携わる。その後、Johnson&Johnsonにて病院経営コンサルティングに3年携わり、2003年、Global Health Consulting Japanを3人で起業、取締役副社長。その後、(株)メディカルアーキテクツを起業、代表取締役。(株)girasolに事業売却。 2012年に株式会社ぺっとぼーどを起業、代表取締役。2016年に株式会社ペットボードヘルスケア(現、ハチたま)を設立、代表取締役就任。 現在はねこヘルスケアサービス「toletta(トレッタ)」を発売。

私は猫を飼ったことがないので、猫用トイレについてあまり詳しくないのですが、猫用トイレといえば、おしっこをしたらその砂だけ取って換えるというイメージです。tolettaは従来の猫用トイレとどう違うのでしょうか?
今、猫用トイレには2タイプあって、おしっこやうんちをしたところだけ砂を換えるものか、2層式になっていて、下の層に敷いたシートにおしっこだけが落ちるものがあります。後者のタイプは掃除も楽だし臭わないということで、日本では爆発的に普及しているんです。だけど、猫の場合、このシートを換えるのは平均1週間に一回程度なんですよ。
それだと猫がいつどれくらいおしっこをしているか全くわからないですね。
そうなんです。さらに犬と違って多頭飼いしている人も多いので、どの猫がしたおしっこかもわからないのです。それを解決したのがtolettaです。

2層式トイレの従来の構造をそのまま活かして、尿の重量を計測する仕組みにし、さらに猫の体重も併せて計測できるようにセンサーを実装しました。付属のカメラとAIで猫の顔を識別できるので、どの子がどのタイミングでおしっこをしたかも分かります。
そもそもなんですが、なぜおしっこの重量や回数が猫の健康管理に必要なんですか?
家で猫を飼う人が多くなったことから、この25年で、猫の寿命が大体2.5倍伸びて、15歳ぐらいまで生きれるようになりました。一方で長生きする分、病気になる猫も増えています。

猫は元々砂漠の動物なので、少ない水分で生きていけるように腎臓がとても強いんです。だけど、長生きすることによって体が腎臓に負けちゃうんですね。その結果、猫の大体半数が泌尿器の病気になると言われています。泌尿器の病気のなかでも、一度重篤なのが慢性腎不全。慢性腎不全は、腎臓が破壊されて毒を取れなくなるんです。なので、毒が回ってしまって尿毒症になって死んじゃう。今それは治らない病気なんです。
長生きできるようになった分、課題が増えているんですね…。
大体、高齢の猫の3割は腎不全で死ぬと言われています。そしてその病気に人間が気付いたときはすでに末期で、動かなくなったとか、吐いたりとか。明らかに症状として現れてきたときは、既に遅いんです。でも、ステージ1、2の早い段階から初期症状が分かれば、治療することはできます。その主な症状というのが、体重減少と多飲多尿なんです
毎日のおしっこの量や回数なんて… 日中家にいなけば余計に把握できないところですよね。ましてや多頭飼いならどっちがしたか分かんない。
そうなんですよ。体重をこまめに量るのも大変だし、尿の変化をみるのはもっと難しいんです。家でどうやって猫の健康状態を人間がいないときであっても把握できるか。それを解決できるのがトイレだったんです。尿量や体重の変化が診断の肝になってくるので
なるほど〜。現在「toletta」では、体重とおしっこはこのトイレに入る度に計れるんですよね?
そうです。トイレの2層目におしっこが落ちると、トイレに入ったタイミングで量った猫の体重からおしっこの分だけ重量が減るので、その差で尿量を計っているんです。

猫がトイレをするたびに、尿量・尿回数と体重を記録することが可能となりました。そして飼い主は、専用のアプリでそれらの情報をスマホアプリで、いつでも確認することができます。
これまで感覚でしか分からなかったことが、ここまで正確に管理されていれば飼い主さんも安心ですね!ユーザーさんからの反応はどうでしたか?
tolettaのデータが気になったので、病院に連れて行ったところ病気が発見できたっていうご報告をいただくことはよくあります。病気になられたのはあんまりいいことではないのかもしれないけど、でも早く発見できたことが治療につながったのは嬉しいですね。
病が重篤化する前に気付けることで治療費が安く済むこともありますよね。
そうなんです。実際に販売を開始して、Amazonの猫の製品カテゴリーで1位のベストセラーになったんです。これにはびっくりしちゃって。
それはすごいです! 猫の健康管理に課題を感じている飼い主さんのニーズにマッチしていたんですね。

大手企業の参入があったからこそできた、AI機能による差別化

開発で苦労した点はありましたか?
いっぱいありすぎて…(笑)。でもやはり、一番大きかったのは大手企業の参入ですね。tolettaの開発途中に大手家電メーカーが体重も尿量も計れるトイレのリリースを発表したんです。さらに追い打ちをかけて、尿量を測る技術が予想以上に難しく、お客様へのお届けを延期することになってしまいました。
なんとも胃の痛くなる話ですね…。
去年の今頃は本当に最悪でした。そんな最悪な時に取締役の松原が入社することになって。どうなることかと思いましたよね。

株式会社ハチたま 取締役 松原あゆみ(まつばらあゆみ)さん

2012年新卒でディー・エヌ・エーに入社。ショッピングモール事業部へ配属。コンサルティング営業とシステム開発PMを経験。2016年に明治安田生命に入社。アクチュアリー業務に従事。決算・収益検証・分析業務・海外取引先との折衝・商品開発などを経験。2018年に「ねこが幸せになれば、人はもっと幸せになれる」をビジョンにしている会社ハチたまに惹かれ入社し、2019年取締役に就任。

入社早々、会社がなくなるんじゃないかと思いました(笑)。
そこからは開発担当の社員が画期的な測定方法を編み出したんです、正月に。
正月に! それが先ほどのおしっこ前後の体重差を量る方法ですね。
そうです。本当にこれはもう、泣いて喜びました。新しいアイデアなのでできるかどうか分からなかったけど、チャレンジしてみようっていうことでチャレンジして。結局開発には10ヶ月ぐらい掛かりました。
多頭飼いの家庭でも、AIで猫の顔を認識できるように、というのは当初から開発する予定だったんでしょうか?
実は最初は首輪で認識しようとしたんです。首輪タグなどを使ってそれぞれの猫を識別する方が技術的には簡単だからです。だけど、「そんなのねこに優しくない!」とうちのねこ好きスタッフたちから猛反対されまして(笑)

そこで画像認識で見分ける技術を開発しました。首輪が苦手な猫が多くて、ずっと首輪をつけ続けると皮膚にトラブルを起こしてしまったり、ストレスを感じて、逆に健康を損なってしまう猫もいるので。
結果としては、この機能が大手メーカーがリリースした猫トイレとは差別化できるポイントにもなりました。

トイレ中の猫の様子や顔をtolettaの内蔵カメラで撮影しているので、「人間には見せないダルそうなしかめっ面の顔で砂かけしているのが見れて面白かった」といったご意見や、「猫の最期を看取ることができなかったけど、最後に頑張ってトイレに入っていた姿がtolettaのデータに残っていました」なんてお声いただいていて。感極まって毎回泣いてしまいますね(笑)。
それは泣ける…。

オフィスには2匹の猫が。人見知りででてきれくれず…。

あとはユーザーさんが製品に関するリクエストなどを送ってくれることもあります。猫を想って真面目に意見を言ってくれているので、なんだか一緒にtolettaを作っている感じがするんです。猫好きなスタートアップである私たちを応援してくれているような雰囲気もありますね。
例えばメモとやカレンダー機能も付ける予定はなかったんですけど、猫の健康をワンストップで管理したいんだというご要望が強かったので、アプリの中でそうした機能をつけたりもしています。
猫の医療に直接関わる、獣医さんからの反応はどうですか。
今、飼い主さんが動物病院へやってきて、tolettaで取得したデータのグラフを獣医さんに見せたりすることが多いらしく、びっくりされています。

やっぱり獣医さんにとっても飼い主にとっても、見るべきポイントは普段との違いなんです。病院で検査すればそのときの瞬間の症状は分かるんですけど、日頃と比べてどう違うとか、そういったことまではわからないですから。

一頭でも多く猫を救いたい!海外市場への挑戦

10月に新機能を加えて「toletta2」として生まれ変わったそうですが、今後はどのように展開していく予定ですか?
ゆくゆくはtolettaを使って、収集した健康データをAIが解析し、毎⽇のねこの健康状態から病気になる確率を予測する機能を提供していきたいと思っています。

結局僕たちが一番願っているのは、猫が健康で長生きしてくれることなんです。なので、僕たちが今目指してしてるのはこうしたデータのプラットフォーム化。データをどんどん活用してさまざまな事業者さんと連携して、どうしたら健康で長生きできるサービスに持っていけるか。これが本来のビジネスの目的です。

ついこの間もデータが累計100万件超えました。それは僕らだけでは生かせません。やっぱり動物病院の人だったり、世の人たちと連携してこれをうまく活用しないと、せっかく集まったデータが無駄になってしまいます。
動物病院との連携も期待できそうですね。
そうですね。ただ日本の動物病院は個人動物病院が多くて、一軒一軒、導入してもらおうとするとどうしても時間がかかってしまいます。

それに対して、アメリカの場合はチェーン展開されていて、一番大きいチェーンだと病院数も2000病院くらいあるんです。本部と連携が取れれば、一気に2000病院を巻き込んで、多く猫の健康に寄与できると思っています。実は来年からはアメリカにも拠点を持つ予定で、猫のビックデータを活用した病気の予防など、さまざまなことに役立てていきたいです。
それはすごい! 世界中の猫と飼い主さんを幸せにするイノベーションになりそうですね。今後のご活躍も楽しみにしています!

編集後記

オフィスには造作されたキャットウォーク

以上、今回は、猫用スマートトイレ「toletta(トレッタ)」の開発と販売を手掛けるハチたまさんにお話を伺いました。

猫の寿命が長くなったことで嬉しい反面、病気になる猫も増えてしまった現代。なかなか人間が健康管理できない領域に、トイレの工夫1つでソリューションを提供しています。最先端の技術を、ペットとの暮らしという私たちの身近な日常で役立てているハチたまさん。アメリカにも進出されるということで、今後のニュースにもぜひご注目いただければと思います。

最後まで読んでいただき、有難うございました!
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この記事を書いた人
成瀬夏実
成瀬夏実 フリーランスのライター。2014年に独立し、観光・店舗記事のほか、人物インタビュー、企業の採用サイトの社員インタビューも執筆。個人の活動では、縁側だけに特化したWEBメディア「縁側なび」を運営し、全国の縁側を150軒みた。1歳と3歳の2児の母。