ChatGPTに何を聞いても、あなたの会社のことは知らない ― 社内データを”AI Ready”にする最初の一歩

生成AIは、あなたの会社のデータを知らない(第1回)

生成AIは、あなたの会社のデータを知らない(第1回)

ChatGPTに、自社のことを聞いてみてください。

「先週の経営会議で決まったことは?」「顧客Aの直近1年の問い合わせ傾向は?」

答えられるはずがありません。その情報は、AIに届いていないからです。

生成AIの導入率は57.7%に達しています(NRI 2025年調査)。しかし「効果が期待を大きく上回った」と答えた日本企業は約10%(PwC 2025年春調査)。多くの企業が生成AIを「使ってはいる」のに、成果につながっていません。原因はシンプルで、AIが学習しているのはWeb上の公開情報が中心であり、社内の業務データはAIにとって存在しないも同然だからです。

この断絶を手作業で埋めている人もいます。Excelにエクスポートしてからコピー&ペースト、SQLで引いた結果をプロンプトに組み込む。方向は正しいですが、やり方が特定の人に依存し、データの鮮度も手動更新の頻度に縛られ、対象が増えたときに回りません。

この記事では、データ連携基盤「ASTERIA Warp」の生成AIアダプターを使って、この断絶を最もシンプルなフローで埋める実例をご紹介します。

社内システムとAIの間を「フロー」でつなぐ

社内のシステムからデータを取り出し、変換・加工を行い、別のサービスに渡す。この「つなぐ」処理をGUIで設計・運用できるのが、iPaaS(Integration Platform as a Service)と呼ばれるデータ連携基盤です。

ASTERIA Warpは19年連続国内シェアNo.1()のデータ連携基盤です。2025年12月リリースの最新版で、生成AIとの連携を担う生成AIアダプターが加わりました。Azure OpenAI、Claude、Gemini、OpenAI API、Amazon Bedrockに対応しており、フローの中にAI処理を組み込むことができます。

データ連携基盤の強みは、個別のスクリプトや手作業ではなく、連携の流れを仕組みとして設計できる点です。エラー通知やスケジュール実行も含めて、一つの「フロー」として可視化・管理できます。

※テクノ・システム・リサーチ「2025年ソフトウェアマーケティング総覧 EAI/ESB 市場編」による

社内システムと生成AIの断絶(BEFORE)とデータ連携基盤による接続(AFTER)

実例:議事録 → AI要約 → Slack投稿

では、実際にフローを作ってみます。

やりたいこと: 共有フォルダに議事録ファイルを保存したら、AIが内容を要約して、Slackの指定チャンネルに投稿する。

たったこれだけのフローですが、「社内データをAIに届ける」とはどういうことかを体感するには十分でしょう。

フローの全体像

共有フォルダに議事録を置くと、テキスト抽出→プロンプト生成→AI要約→投稿用に加工→Slack投稿、という流れで処理が進みます。

フローの概念図:共有フォルダ → テキスト抽出 → 生成AIアダプター → Slack投稿

これをASTERIA Warpのフローデザイナーで実際に構築すると、以下のようになります。

Warpフローデザイナーでの構築画面

※起点はSharePointやBoxなどのクラウドストレージに変更できます。Warpにはそれぞれ専用のアダプターが用意されています。

各コンポーネントの役割

① 共有フォルダから議事録を取得・テキストを抽出
フローの起点です。指定した共有フォルダを定期的に確認し、新しいファイルがあればテキストデータとして読み取ります。今回の例では.txtファイルを入力としているため、ファイル読み取りコンポーネントでそのまま処理できます。

② プロンプトを生成
抽出したテキストを、WarpのEmbed関数を使ってプロンプトに埋め込みます。${input1} の部分に議事録テキストをマッピングすることで、毎回同じ形式のプロンプトがAIに渡されます。

以下の議事録を読み、3点を出力してください。
フォーマットどおりに出力し、それ以外の文章は出力しないでください。

【フォーマット】
要約
(主要な実績・数値を中心に2〜3行。文章は短く端的に)

決定事項
- (決定事項のみ。議論中・予定の事項は含めない)

アクションアイテム
- 担当者:内容(期限)
(明確に担当と期限が特定できるもののみ。補足説明は不要)

【議事録】
${input1}

ポイントは、出力の構造とトーンをプロンプトで明示的に指定していることです。「要約」「決定事項」「アクションアイテム」の3点に絞り、アクションアイテムには「担当者:内容(期限)」の形式を求めることで、何が決まり、誰が何をいつまでにやるのかが一目でわかる出力になります。

③ 生成AIアダプター・AIで要約
このフローの中心です。組み立てたプロンプトをAI APIに送信し、要約結果を受け取ります。

④ 要約結果を投稿用に加工
AIの応答にファイル名や処理日時などのヘッダー情報を付加し、Slackに投稿する形式に整えます。ここでもEmbed関数を使い、テンプレートにデータを埋め込みます。

⑤ Slackに投稿
加工済みのテキストを、Slackの指定チャンネルに投稿します。出力先はTeams、メール、kintoneなど、アダプターを差し替えるだけで変更できます。

実際の入出力を見てみる

サンプルの議事録で、このフローを通すとどうなるか見てみます。

入力:議事録ファイル(約1,500文字、抜粋)

2026年3月3日 マーケティング部 週次定例
場所:本社8F 会議室B
出席者:佐藤(部長)、田中、鈴木、山田

1. 先週の施策振り返り

(1)展示会「DX Innovation 2026」
   - リード獲得:目標200件に対し187件(達成率93.5%)
   - 名刺スキャン分が一部未取り込み。田中が確認したところ15件ほどが未反映の可能性あり
   - ブースへの立ち寄り数は約450名。昨年同時期の320名から大幅増
   …(中略)…

(2)メルマガ(2/24配信分)
   - 開封率:22.3%(前月比+1.8pt)
   - クリック率:3.1%(前月比-0.2pt)
   …(中略)…

(3)ウェビナー(2/27開催、田中担当)
   - 参加者68名(申込93名、参加率73.1%)
   - 満足度アンケート:4.2/5.0(回答率61.8%)
   - 個別商談希望:4件。うち1件はエンタープライズ規模の引き合い
   …(中略)…

3. 決定事項
   - 展示会フォローアップメールの送信を3/5に前倒し(田中担当)
   - 来期予算案のたたき台を3/13までに作成(佐藤担当)
   - ウェビナーのオンデマンド配信は4月第2週を目標に公開(田中担当)

議論の経緯や発言の詳細、共有事項なども含む実際の議事録をイメージしたファイルです。これをフローに通すと、以下の出力が得られます。

出力:生成AIアダプターの応答例(gpt-5-miniによる実行結果)

要約
展示会リード187件(目標200、達成率93.5%)、来場約450名(昨年320名)、転換率41.6%。
メルマガ開封率22.3%(+1.8pt)、クリック率3.1%(-0.2pt)。
ウェビナー参加68名(参加率73.1%)、満足度4.2/5、商談希望4件。

決定事項
- 展示会フォローアップメールの送信を3/5に前倒し(田中担当)
- 来期予算案のたたき台を3/13までに作成(佐藤担当)
- ウェビナーのオンデマンド配信は4月第2週を目標に公開(田中担当)

アクションアイテム
- 田中:展示会フォローアップメール送信(3/5)
- 田中:ウェビナーのオンデマンド配信公開(4月第2週)
- 鈴木:新製品LP公開(3/9)
- 山田:パートナー向け説明会資料作成(3/5)
- 田中:年度末キャンペーンのバナー素材入稿(3/6)
- 佐藤:来期予算案のたたき台作成(3/13)
- 各メンバー:担当施策の概算費用を佐藤に提出(3/10)

このAI応答が、そのままSlackの投稿本文になります。Slackアダプター側では、ファイル名や処理日時をヘッダーとしてテンプレートで付加します。

Slackへの投稿イメージ

📝 議事録要約(自動生成)
ファイル名:20260303_マーケティング部_週次定例.txt
処理日時:2026-03-03 11:32

要約
展示会リード187件(目標200、達成率93.5%)、来場約450名(昨年320名)、転換率41.6%。
メルマガ開封率22.3%(+1.8pt)、クリック率3.1%(-0.2pt)。
ウェビナー参加68名(参加率73.1%)、満足度4.2/5、商談希望4件。

決定事項
- 展示会フォローアップメールの送信を3/5に前倒し(田中担当)
- 来期予算案のたたき台を3/13までに作成(佐藤担当)
- ウェビナーのオンデマンド配信は4月第2週を目標に公開(田中担当)

アクションアイテム
- 田中:展示会フォローアップメール送信(3/5)
- 田中:ウェビナーのオンデマンド配信公開(4月第2週)
- 鈴木:新製品LP公開(3/9)
- 山田:パートナー向け説明会資料作成(3/5)
- 田中:年度末キャンペーンのバナー素材入稿(3/6)
- 佐藤:来期予算案のたたき台作成(3/13)
- 各メンバー:担当施策の概算費用を佐藤に提出(3/10)

約1,500文字の議事録が、数秒で「何が決まったか」「誰が何をいつまでにやるか」に整理されます。会議に出ていなかったメンバーも、Slackを開くだけで要点を把握できます。

やってみてわかったこと

このフローを実際に組んでみて、いくつか実感したことがあります。

プロンプトの設計が、AIの出力品質を左右する。
最初は「議事録を要約してください」とだけ指示しましたが、AIの応答は冗長で、決定事項とアクションアイテムが混在していました。①②③の構造を指定し、アクションアイテムに「担当者・期限付き」と明記したことで、そのまま共有できる出力に変わりました。プロンプトはフローデザイナー上でいつでも修正できるので、AIの応答を見ながら調整を繰り返せます。

フローにしておく意味は「再現性」にある。
ChatGPTに毎回コピー&ペーストする方法でも、1件の議事録なら同じ結果は得られます。しかし、週に10件の議事録が生まれる組織では、コピー&ペーストを担っていた人が休んだ瞬間に要約も止まります。フローにしておけば、ファイルを置くだけで処理が回り続けます。

出力先を変えるだけで用途が広がる。
今回のSlack投稿フローをベースに、出力先のアダプターをkintoneに差し替えれば議事録データベースになり、メール送信に差し替えれば関係者への自動報告になります。入力からAI処理までの「型」はそのまま、末端だけ変えれば済むのがデータ連携基盤の利点です。

まとめ

生成AIは賢いツールです。でも、あなたの会社のことは知りません。

今回ご紹介した「議事録→AI要約→Slack」のフローは、最もシンプルなデータ連携の実例です。コンポーネント数個のフローですが、AI活用の要点が詰まっています。社内データをAIが活用できる状態、つまり「AI Ready」にすること。それが、生成AIを活かすための出発点です。

次回からは、この「渡し方」をさらに掘り下げていきます。

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出典

  • NRI(野村総合研究所)「ユーザー企業のIT活用実態調査(2025年)」(2025年11月25日発表)
  • PwC Japanグループ「生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較」(2025年)


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執筆者:ASTERIA Warp チーム

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