クラウドもAll-in-oneの時代へ?!

 今日はIBM SoftLayerの話から始めましょう。

同様のサービスで先行するAWSは丸紅の事例を盛んにアピールしていて、先日のクリップにも、『プライベートクラウドをAWSへ全面移行、DR実現にネットワーク機能をフル活用』とあります。

丸紅は国内有数の大商社であり、従業員も4000人を越え、世界中にネットを張り巡らせている。
けれども、「システム」の視点から見ると、モノを作っているわけでも、流通・販売しているわけでもなく、カネや信用を直接扱っているわけでもないため、リアルタイム性、トランザクションおよびデータ量などは比較的少なく、その規模は中程度といったところではないでしょうか。だからこそ全面移行できる。

クラウドもAll-in-oneの時代へ?!

米国のパトリオット法に対する懸念に、
「仮に丸紅が捜査されるような事態になったら、当局へデータを提出する必要がある。それはパブリッククラウドでデータを差し押さえられることと何ら変わりが無い」

 との答えは秀逸ですが、もし日本国内にDCがなかったら、果たしてAWSを選択していたかどうか。疑問が残るにしても、実際にはDCが国内にあり、このような事例がクラウド利用の敷居を低くしていることは確かでしょう。

 そのため、緊急ユーザ会の開催を報じた『日本データセンター開設目前で期待高まるSoftLayer』に信憑性があります。AWSなどはシステム構成を公開していないのに対して、この会に参加したSoftLayer担当者はあけすけに内部構成を説明したため、参加者の心を鷲掴みにしただろうと思われます。

日本のユーザは、とにかく中身を知りたがります。たとえ自分たちとは直接関係の無い仕組みであっても――。
それが日本企業の技術や信頼を支える基礎となっているのですが、外国人にはなかなか理解されません。なので、この調子でSoftLayerのプロモーションを本格化したら、そして「IBMは高い」というイメージさえ払拭できたら、50年以上この地で商売をしてきた実績(アウトソーシングサービスで丸紅のような事例も多数)と相俟って、いっきに人気を博す可能性があります。

 世界でもそんな気配があるのか、『米NetApp、AWSで仮想インスタンスを構築できる「Cloud ONTAP」』との発表の中に、クラウド側のストレージを専用線で繋いで利用できるプロバイダにSoftLayerが追加されたとあります。

 IBM自身の策としては――
 SoftLayerの上にPaaSであるBlueMixが載る。故に、BlueMix上にミドルウェアを載せればすぐに業務で使えるプラットフォームが完成する。価格性能比でもAWSに引けを取らないといって、『データベースもクラウドへ、米IBMがサービスを続々公開』。

 上記データベースサービスはインメモリによる高速性を特長にしています。今やDBの「インメモリ」は常識。
Wal-Martの事例で巨大データウェアハウス(DWH)構築ブームが起こってからもうすぐ20年。ブームの火付け役だったNCRから分離(再)独立したTeradataは、『データソースの統合と協業でビッグデータ市場のイニシアチブを握る』と、インメモリ以上の性能などを謳い文句に、新たなブーム到来に期待しているようです。

そして、ECOシステムの重要性を認識しているものの、かつてDWHが流行ったときよりもプレーヤーの種類、数ともに増えた市場のイニシアティブ獲得は、一筋縄で行きそうにありません。
 意味のあるビッグデータそのものがまだ、『富士通、ベトナムで農業向けクラウドサービスの実証実験を開始』のような動きで作り出されようとしている段階ですし。

 やはりというべきか、ようやくというべきか、『NEC、SDN対応仮想化&クラウドサービス基盤の新製品』と、All-in-oneシステムでもネットワークの仮想化を取り入れたものが出てきました。

 サーバなんて皆同じ、ストレージも、『「Office 365」加入者は「OneDrive」容量無制限に』といった傾向にあり、収益性の確保が難しい。ならば、ネットワークの新技術をいち早く取り込むしかないでしょう。

 All-in-oneシステムはもともとオンプレミス環境に適したもので、「簡便さ」においてクラウドサービスと競合する。そして、その簡便さの恩恵をもっとも受けるSMB市場では、ソフトウェアベースのストレージによって、『中小企業が自社でストレージを購入することはなくなる』とする見方もあるわけですから、All-in-oneシステムもさらに磨かれて、変わらざるを得ないでしょう。



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