SAPと周辺システムをつなぐ際、自前で開発するか、専用のデータ連携ツールを使うかは大きな判断になります。とくにSAPはIDocやBAPIといった独自の仕組みを持つため、連携の作り込みには専門知識と工数がかかります。そこで多くの企業が、SAP連携に対応したデータ連携ツールの活用を検討します。本記事では、SAPデータ連携ツールがなぜ必要なのか、比較・選定で見るべきポイント、選び方の進め方までを、導入事例とあわせてわかりやすく解説します。自社に合うツールを見極めるための判断軸を持ち帰っていただけるはずです。SAP連携は一度仕組みを作ると長く使い続けるため、最初のツール選びがその後の運用を大きく左右します。だからこそ、目先の機能だけでなく、数年先の運用まで見据えて比較することが大切です。
目次
SAPデータ連携ツールとは、SAPと他のシステムやサービスのあいだでデータを自動的にやり取りするための専用ソフトウェアのことです。SAPの受注・在庫・会計といったデータを周辺システムへ渡したり、外部のデータをSAPへ取り込んだりする処理を、プログラムを一から書かずに構築・運用できます。
SAPは企業の基幹を担う一方、IDoc・BAPI・RFC・ODataといった独自の連携インターフェースを持ち、扱うにはSAP特有の知識が求められます。データ連携ツールは、これらの仕組みへの接続をあらかじめ用意し、SAPに深く精通していなくても連携を組み立てられるようにします。SAP連携の「むずかしさ」を吸収してくれる存在、と考えるとわかりやすいでしょう。具体的には、SAPからデータを取り出す、形式を変換する、別システムへ書き込む、決まった時刻に自動実行する、といった一連の処理を、画面上で部品を組み合わせるように設計できます。プログラムを書く代わりに、流れを目で見ながら作れるのが大きな違いです。
近年は、こうしたツールの多くがノーコードで連携を構築できるようになっており、情報システム部門だけでなく、業務部門が主導で連携に取り組める環境が整ってきています。
なお、SAP連携のツールには、SAPに特化した製品もあれば、SAPを含む幅広いシステムに対応した汎用的なデータ連携ツール(EAI/ETLツール)もあります。SAPだけをつなぎたいのか、SAPを含む社内の多様なシステムをまとめてつなぎたいのかによって、適した選択肢は変わります。多くの企業ではSAP以外にも連携したいシステムが複数あるため、SAPに対応しつつ幅広くつなげる汎用ツールが選ばれる傾向があります。
SAP連携を自前で開発する「個別開発」は、自由度が高い反面、いくつもの負担を抱えます。第一に、SAP独自の仕組み(IDocやBAPIなど)を理解した人材が必要です。SAPと連携先の双方に詳しい技術者は限られており、確保や育成が課題になります。
第二に、保守の負担です。連携先が増えるほど、認証やエラー処理、データ形式の変換といった作業が積み重なります。SAP側のバージョンアップや、連携先の仕様変更のたびに手直しが必要になり、運用しているうちにメンテナンスが重荷になりがちです。
第三に、属人化のリスクです。プログラムだけで組まれた連携は中身が見えにくく、作った担当者しか分からない状態になりやすいものです。担当者が異動・退職すると、誰も触れなくなってしまうことも珍しくありません。SAPという止められない基幹システムの連携で、この属人化は大きなリスクになります。
さらに、開発期間の問題もあります。SAP連携は要件が複雑になりやすく、自前で作ると設計・実装・テストに長い時間がかかりがちです。ビジネスのスピードが求められるなかで、連携の構築に数か月を要するのは大きな機会損失になります。すでに用意された部品を組み合わせて短期間で連携を立ち上げられることは、ツールを使う大きな動機の一つです。
データ連携ツールは、これらの負担を軽減するために使われます。接続や変換の仕組みが用意され、処理が画面上で可視化されるため、構築・保守の効率が上がり、属人化も避けられます。
SAPデータ連携ツールを比較・選定する際は、次のポイントを確認するとよいでしょう。
| 比較ポイント | 確認すること |
|---|---|
| SAPへの接続方式 | IDoc・BAPI・RFC・ODataなど、必要な方式に対応しているか |
| 連携先の豊富さ | 周辺の基幹・SaaS・DB・ファイルに広く対応しているか |
| ノーコード対応 | 専門知識がなくても画面操作で連携を作れるか |
| データ変換機能 | 形式やコード体系の違いを吸収する変換ができるか |
| 運用・監視 | スケジュール実行・エラー時の再実行・稼働監視が備わるか |
| 実績・サポート | SAP連携の導入実績や、サポート体制が十分か |
とくに重要なのが、SAPへの接続方式と連携先の豊富さです。自社がSAPとどの方式でつなぎたいのか(大量データのIDocか、Web連携のODataか等)、また周辺のどのシステムとつなぐ必要があるのかを整理し、それらに対応しているかを確認します。
あわせて、ノーコードで作れるか、データ変換が柔軟か、運用・監視の仕組みが整っているかも欠かせません。SAP連携は止められない基幹のやり取りであり、「作れること」だけでなく「安定して運用し続けられること」が重要だからです。導入実績やサポート体制も、長く使ううえで安心材料になります。
とくにデータ変換機能は見落とされがちですが重要です。SAPと連携先では、項目名やコード体系、日付・数値の形式が異なることがほとんどです。これらの違いを吸収する変換(マッピング)が柔軟にできないと、連携のたびに細かな手作業が発生してしまいます。画面上でわかりやすく変換ルールを定義できるかどうかは、実務での使い勝手を大きく左右します。
また、運用・監視も軽視できません。SAP連携は夜間バッチなど人がいない時間に動くことも多く、失敗したときにすぐ気づける通知や、自動で再実行する仕組みがあるかどうかで、安定運用のしやすさが変わります。トラブルが起きてから慌てないために、運用機能は導入前に必ず確認したいポイントです。
SAP連携を実現する手段そのものも比較しておきましょう。
| 手段 | 特徴 | 課題 |
|---|---|---|
| 個別開発(スクラッチ) | 要件に細かく対応できる | 工数大・専門人材必須・属人化 |
| データ連携ツール | ノーコードで構築・運用しやすい | ツールの選定が必要 |
| 手作業(CSV出力入力など) | 一時的・少量なら対応可能 | ミス・遅延、自動化できない |
一時的・少量の連携なら手作業でも済みますが、継続的・定型的な連携では現実的ではありません。要件が特殊で細かい制御が必要なら個別開発も選択肢ですが、多くのケースでは、構築・運用の効率と安定性のバランスからデータ連携ツールが有力になります。重要なのは、自社の連携の規模・頻度・体制に照らして、総合的なコスト(開発だけでなく保守・運用まで含めた費用)で比較することです。
コストを比較する際は、初期の構築費用だけを見ないことがポイントです。個別開発は一見すると外注費だけで済むように見えますが、実際には仕様変更のたびの改修費、障害対応の人件費、属人化による引き継ぎコストなどが継続的に発生します。ツールはライセンス費がかかる一方で、これらの運用コストを抑えられます。数年単位の総保有コスト(TCO)で見ると、評価が変わることが少なくありません。
ツール選定は、次のステップで進めると失敗を防げます。まず、つなぎたいシステムと、やり取りしたいデータ・頻度を洗い出します。次に、その要件(接続方式・連携先・変換・運用)を満たすかでツールを絞り込みます。そのうえで、評価版などで実際に試し、自社の担当者が無理なく扱えるかを確認します。
選定で陥りやすいのが、機能の多さだけで選んでしまうことです。大切なのは「自社の連携要件を満たし、自社の体制で運用し続けられるか」です。とくにSAP連携では、現場が主導で連携を作り・直せるかどうかが、長期的な使い勝手を左右します。導入後の運用イメージまで描いて選ぶことが、後悔しないコツです。
また、評価版で試す際は、実際に自社でつなぎたいシステムとの連携を、想定する担当者自身に触ってもらうことをおすすめします。デモを見るだけでは分からない「自分たちで作れるか・直せるか」という感覚を、導入前に確かめておくことが、現場に定着するツール選びにつながります。複数のツールを同じ条件で試し、比べてみるとよいでしょう。
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データ連携ツールを使ってSAP連携を実現した企業があります。
製造業のi-PRO株式会社は、SAP S/4HANAを含む多数のシステムについて、214本の連携を4か月で構築し、開発コストを10分の1に削減しました。個別開発では難しい規模とスピードを、ツールの活用で実現した好例です。三井不動産株式会社は、SAPを含む10のシステムを疎結合でつなぐデータ連携基盤を構築しました。横河電機株式会社は、ServAirを中心にSAPやSalesforce.comなどと連携し、アフターサービスの情報を本社でリアルタイムに一元管理できるようにしています。
いずれの事例も、SAP連携をツールで標準化・可視化することで、大規模な連携を効率よく構築し、安定して運用している点が共通しています。
注目したいのは、これらの企業がSAPだけでなく、Salesforceやその他のクラウド、データベースなど多様なシステムを同じツールでつないでいる点です。SAP連携専用の仕組みを個別に持つのではなく、社内のあらゆる連携を一つのツールに集約することで、運用の窓口が一本化され、管理がシンプルになります。SAPを起点に、社内のデータ連携全体を見直すきっかけとしてツールを導入する企業が増えています。
選定時に陥りやすい注意点も押さえておきましょう。
これらを避けるには、要件を整理し、実際に試し、運用まで見据えて選ぶことが重要です。逆にいえば、この3点を押さえておけば、選定で大きく外すことはありません。SAP連携は専門性が高いぶん、ツール選びの良し悪しが現場の負担に直結します。時間をかけてでも、自社の要件と体制に本当に合うものを見極める価値があります。
Q. SAP連携は自前開発とツールのどちらがよいですか?
A. 要件が特殊で細かい制御が必要なら個別開発も選択肢ですが、多くの場合、構築・運用の効率と安定性からデータ連携ツールが有力です。総合コストで比較するとよいでしょう。
Q. SAPデータ連携ツールを選ぶとき一番重要なのは何ですか?
A. 自社が使いたいSAPの接続方式(IDoc・ODataなど)と、つなぐ周辺システムに対応しているかです。あわせてノーコード対応や運用・監視機能も確認します。
Q. SAPに詳しくなくてもツールで連携できますか?
A. 多くのツールはSAPの仕組みへの接続を内部で引き受けるため、専門知識が浅くても連携を構築しやすくなっています。
Q. ツールはどう選び始めればよいですか?
A. まずつなぎたいシステムとデータ・頻度を洗い出し、要件を満たすツールを絞り、評価版で実際に試すのがおすすめです。
SAPデータ連携ツールは、SAP独自の仕組みへの接続を引き受け、周辺システムとの連携をノーコードで効率よく構築・運用できるソフトウェアです。SAP連携を自前開発すると、専門人材・保守・属人化の負担が大きくなりがちで、多くの企業がツールの活用を選んでいます。比較の際は、接続方式・連携先・ノーコード・変換・運用監視・実績を確認し、総合コストと運用イメージで判断することが大切です。
ASTERIA Warpは、SAP S/4HANAやSAP Concurなどとの連携実績を持ちながら、Salesforce・kintone・Excel・クラウドサービスまで100種類以上のシステムとつなげるデータ連携ミドルウェアです。ノーコードのフローデザイナーで連携を組み立てられるため、専門人材に頼らず情報システム部門や業務部門が主導で構築・運用できます。i-PRO株式会社が214本の連携を4か月で構築し、開発コストを10分の1に削減した事例のように、大規模なSAP連携も短期間で立ち上げた実績があります。
SAP連携のツール選びを進めている方は、まず評価版で実際の使い勝手を確かめてみることをおすすめします。ASTERIA Warpでは30日間の無料トライアルや、5日間のクラウド体験もご用意しています。
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PM・SE・マーケティングなど多彩なバックグラウンドを持つ「データ連携」のプロフェッショナルが、専門領域を超えたチームワークで「データ活用」や「業務の自動化・効率化」をテーマにノウハウやWarp活用法などのお役立ち情報を発信していきます。
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