
AI-Ready実装シリーズ
AIにデータを渡すだけでは、業務は変わりません。AIの結果を業務システムに取り込んで、はじめて日々の仕事に活かせます。本シリーズは、生成AIを業務に組み込むための前処理と検証を、ASTERIA Warpの具体的な実装で紹介します。本記事は、AIに渡せる形に整える「入口」の一例です。全体像は シリーズの地図(L01)、AI-Readyの考え方は 「AI-Readyとは?」、生成AIアダプターの動作イメージは 「ChatGPTに何を聞いても、あなたの会社のことは知らない」 をご覧ください。
会議のホワイトボードを写真に撮って共有フォルダーに置いたまま、誰も文字起こししていない。手書きの議事録がスキャンされてPDFやJPEGのまま眠っている。こうした画像ファイルは、そのままでは社内の検索や要約の素材に使えません。画像を、文字と構造を持ったデータに変換する工程が必要です。この変換こそが、AI-Readyの前処理です。
目次
ホワイトボードの写真や手書き議事録は、画像を読み取れる生成AIをASTERIA Warpから呼び出せば、AI連携に適したデータ形式であるマークダウン形式に変換できます。
[用語]マークダウン形式
テキストだけで見出しや箇条書き、表などの構造を表せる、軽量な記法です(英語ではMarkdown、ファイルの拡張子は .md)。特別なソフトがなくても読め、AIやツールが構造を読み取りやすいのが利点です。
たとえば、会議のホワイトボードを撮った次のような写真を入力とします。

これを画像に対応した生成AIに読み取らせ、次のようなマークダウン形式のテキストとして出力させます(出力例。実行のたびに細部は変わりえます)。
# 定例MTG 2026-07-01
会議室A / 14:00-15:00
出席:田中・佐藤・鈴木・山本(欠席:井上)
## 議題
1. 新機能のリリース日確認
2. レビュー体制の見直し
3. 障害対応フローの共有
4. 次回日程
## 決定事項
- リリースは9/30で確定
- レビューは2名体制(実装者+別チーム1名)
- 障害はSlack #incidentに一次報告
## アクションアイテム
| 担当 | タスク | 期限 | 状態 |
|---|---|---|---|
| 田中 | 仕様書更新 | 7/5 | 着手 |
| 佐藤 | テスト実施 | 7/8 | 未 |
| 鈴木 | 顧客連絡 | 7/6 | 完了 |
| 山本 | 手順書作成 | 7/10 | 未 |
## 次回
7/8(火)14:00〜 会議室B
写真のままでは検索や要約を効率的に行えませんが、マークダウン形式にすれば、見出しや箇条書き、表といった構造を保ったまま、AIやツールが扱いやすいデータになります。
AIに任せるのは、画像から文字を読み取り(OCR)、マークダウン形式にする工程です。読み取りと変換は、生成AIが最も得意とするところです。ASTERIA Warpが担うのは、その変換を繰り返すための前後の工程です。決まった時刻に実行し、対象フォルダーの画像を列挙し、1件ずつ処理し、結果を書き出し、元の画像を処理済みフォルダーへ移します。画像を一枚ずつ手作業でAIに読ませるのと違い、この一連の工程をフローにまとめておけば、いつ何を処理したかが残り、誰が見ても追える形で運用できます。ASTERIA Warpの価値は、この前後の組み立てが図として見えること、そして見えているとおりに動くことにあります。
ASTERIA Warp(前後の処理を管理)

対象フォルダーに置かれた画像を、定期的なスケジュール実行で処理します。
この3つをひとつのフローにまとめておけば、共有フォルダーにたまっていた画像を、順に処理できます。
なお、処理し終えたファイルは処理済みフォルダーへ移すと、次回以降の重複処理を防げます。処理済みかどうかを内部の記録で持つより、フォルダーで分けるほうが、処理待ちと完了が一目で分かり、ファイル連携でも扱いやすくなります。
フローデザイナー上では、上の手順がそのままコンポーネントの並びになります。生成AIの呼び出しにはRESTコンポーネントを使います。
フロー変数の一覧、レート制限への配慮といった設定の詳細は、実装者向けの補足記事で説明します。
生成AIは、同じ画像を渡しても、手書き文字の判読やレイアウトの解釈で出力がぶれることがあります。とはいえ、変換のたびに全件を人が見直すわけではありません。大半はそのまま受け入れ、重要な文書だけ結果に目を通す、という使い分けにできます。精度が求められる用途では、同じ画像を複数回処理して結果を比較する方法もあります。なお、変換結果に誤りが見つかったときに元の画像がないとやり直せないため、元の画像は削除せず処理済みフォルダーに残します。AIの出力はなぜぶれるのか、そのぶれをどう受け止めるかは、別の回であらためて取り上げます。
Q1. OpenAI以外の生成AIサービスに切り替えられますか。
はい、切り替えられます。フローの構成は変わりません。呼び出し先のエンドポイントと、リクエストとレスポンスのJSON形式を、利用するサービスの仕様に合わせて組み替えるだけです。
Q2. 同じフローを画像以外にも使えますか。
はい、対象を差し替えれば使えます。音声ファイルを音声認識APIに渡してテキスト化する、スキャンPDFを1ページずつ画像化してから同じ流れで処理するといった応用が可能です。変わるのはAPI呼び出しの部分とプロンプトで、スケジュール実行、ループ、書き出し、処理済みの管理といったフローの土台は共通です。
Q3. マークダウン形式に変換せず、画像をそのままAIに渡して分析させればよいのでは?
一度きりの分析なら、それでかまいません。分かれ目は、同じ画像を何度も使うかどうかです。画像のままだと、検索する、要約する、分類する、別のシステムに渡すといった用途が増えるたびに、そのつど画像をAIに読ませ直すことになります。読み取りは呼び出しごとに課金され、画像は入力が大きく、結果も毎回わずかにぶれます。一度マークダウン形式に変換しておけば、以降の処理はテキストに対して何度でも軽く実行でき、読み取りは一回で済み、その一回を確かめて保存できます。画像を、繰り返し使えるテキストと構造に整えておく。これが前処理でAI-Readyにする狙いです。
画像をマークダウン形式に変換したことで、検索や要約、分類に使える「入口」が整いました。では、ぶれることのある出力を、そのまま業務システムに入れてよいのか。次回に続きます。
PM・SE・マーケティングなど多彩なバックグラウンドを持つ「データ連携」のプロフェッショナルが、専門領域を超えたチームワークで「データ活用」や「業務の自動化・効率化」をテーマにノウハウやWarp活用法などのお役立ち情報を発信していきます。
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