製造業の紙やExcel、メールには、単価が変わった理由や、品質改善をした経緯が、基幹システムに連携されずに残っています。前編で、サイボウズの南崎健太郎氏は、こうした情報を「宝の山」と呼びました。
後編は、その情報をkintoneに集め、ASTERIA Warpで基幹システムの数字とつなぐ話です。調達の単価改定を例に、設備保全や部品情報、現場と情報システム部門の分担まで伺いました。
左から、アステリア 山脇宏夢、サイボウズ 南崎健太郎氏、アステリア 森慶輔
調達部材の単価が決まった理由を記録するのに向いているのはkintoneだ、と南崎氏は言います。
南崎氏 定性的な情報を保存するのは、kintoneがとても得意なところです。
困るのは、前任者から品目を引き継いだ購買担当者です。山脇も、お客様から同じ悩みを聞いています。
山脇 基幹システムには確定した単価と納期しか入っていないので、前回なぜこの単価で決まったのかが分からない。前任者のメールを探すか、サプライヤーに聞き直すことになります。担当者の異動や退職のときは特にそうです。
左から、アステリア 山脇、サイボウズ 南崎氏
kintoneには、サイボウズが製造業向けに紹介している「材料単価改定履歴管理」のアプリで、品目コード、サプライヤー、改定前後の単価、交渉の経緯などを残します。
山脇 過去の納品遅れや品質不良といったトラブル履歴も、一緒に残すケースがあります。なぜこのサプライヤーで、なぜこの単価なのかを判断する材料になるからです。
森 基幹側で見た型番などで検索して、kintone側で履歴を見れば、こういう経緯で値段が変わったから今この単価なのだ、と確認できる。入力は全部kintoneでしてもらって、そこと基幹をつなぐのがASTERIA Warpの立ち位置です。
山脇 基幹からkintoneに渡すだけでなく、kintoneから基幹に戻すケースもよくあります。上長がkintone上で新しい単価を承認したら、ASTERIA Warpで基幹の単価マスタに書き戻す。これで二重入力が防げます。
ただし、仕組みがあるだけでは、単価が決まった理由は貯まっていきません。
山脇 経緯を入力するのは人です。その運用が定着しなければ、レコードは空のまま。そこはツールでは解決できません。
kintoneが現場の記録に向いている理由を、南崎氏は業務の全体像から説明します。
南崎氏 材料を調達して、作って、届けるまでのサプライチェーンは、ERPなどのシステム群でだいたいまとめて扱えます。とはいえ会社ごとに違いはあるので、どうしてもギャップが出てくる。Fit to Standardと言っても、やっぱりギャップは出るんです。
そのギャップは、ものを作る現場の業務に出ます。
南崎氏 システムを入れる側は、基本的にお願いする立場なんです。『これがルールなので使ってください』と言っても、現場からは『なぜ変えるのか』『そちらの事情は知らない』となってしまいます。だから、現場にどれだけ寄り添えるかがとても大事なんです。
サイボウズ 南崎氏
基幹システムでは、その寄り添い方ができません。
南崎氏 紙やExcelが多くなっているのも、そこに理由があるんです。でも、それだと基幹システムとの整合性が取れない。だから、現場とERPの橋渡しをするのにkintoneが使える。これが、MES(製造実行システム)の領域でkintoneが適している理由だと私は思っています。
現場に寄り添えなければ使ってもらえないのは、データ連携製品のASTERIA Warpも同じです。
森 使ってもらわなければ、というのは、まさに私たちも同じです。業務を効率よく回してもらうために私たちがいる。現場とERPの間に入るのが、ASTERIA Warpの役目だと思います。
南崎氏 現場の情報をデータ化していくと、もともとあるシステムと整合性を取りたい、データを流用したい、実績データは別の場所にある、という話になってきます。このようにデータの場所がバラバラになる場合は、絶対に連携したほうがいいので、データ連携の話は必ず出てきます。
アステリアに届く相談でも同じだと、山脇は言います。
山脇 生産管理と、現場の方が使っているシステムだけでは、業務プロセスが完結していないんです。システム一つでは足りないので、連携のニーズは少なくとも6〜7割はあるという感覚です。
MESの領域に限ると、南崎氏の体感はさらに高くなります。
南崎氏 MESを入れたときに連携が出てくるのは、8〜9割だと思います。ERPの情報を現場に伝えることも、現場の情報を吸い上げて渡すこともあって、双方向なんです。ほぼ100%と言ってもいいかもしれません。
設備保全や部品情報では、扱うデータの量と形によって、kintoneとASTERIA Warpに任せる範囲が変わります。設備保全でのkintoneの使い方として、南崎氏は「定番」を挙げました。
南崎氏 点検系やメンテナンス系、設備の部品在庫の管理、あとは修理依頼ですね。製造から『これが壊れたんだけど、どうにかしてもらえますか』という依頼を受けるワークフローが多いです。
一方、センサーから届く大量のデータを直接扱うのは、ASTERIA Warpの得意なところではありません。
森 正直に言うと、IoTの連携はASTERIA Warpの苦手なところです。データ量が多く、1ミリ秒単位で届くデータは処理しきれません。
アステリア 森
山脇 センサーから直接というのは、ASTERIA Warpだけでは難しい。アステリアのIoT製品のGravioなどでデータベースに貯めて、バッチで取り出す。そういう使い方で、設備のデータを分析しているお客様もいます。
その先について、山脇はこう補足します。
山脇 貯めたデータは、1時間ごと、1日ごとなどに丸めてkintoneやデータウェアハウスに渡します。生データを全件kintoneに入れることは勧めていません。異常が起きたあとに現場で何をしたかはセンサーに残らないので、点検や処置の内容は担当者がkintoneに記録します。
センサーの数値と処置の記録を、同じ設備・同じ時刻で並べて見られるようにするのが目指す形です。
部品表(BOM)は、種類が一つではありません。
南崎氏 EBOM(設計BOM)、MBOM(製造BOM)、それから保守のほうのSBOMがあります。SBOMは、設備を出荷したあとに部材を交換したときなど、作ったときから変わった構成を管理するものです。
南崎氏が価値を見ているのは、SBOMで変わった情報を次の製品設計に戻すことです。
南崎氏 SBOMで変わっていった情報は、次の製品を設計するときにとても大事な情報になります。どの部材の交換頻度や故障頻度が高いかが分かるので、改善のネタになる。絶対に連携したほうがいいのですが、実際はできていません。EBOMは設計、SBOMはサービス管轄と部署が違うことで、情報を取りに行きにくい構造になっています。
取材の様子
森 私たちのデータ連携部分だと、多分最初のEBOMのほうですかね。SBOMの領域は、アフターメンテナンスなど別のパッケージの側でやるケースのほうが多いという印象です。
部品情報は、量と構造にも難しさがあります。
南崎氏 材料構成や材料マスタ自体が、そもそも百万点を超えるケースもあります。普通にやろうとすると難しく、工夫が必要な領域です。あと、リレーショナルな扱いも求められるんですけど、kintoneはリレーショナルではないので、そこは苦労するところです。
BOMそのものの扱いについて、南崎氏はこう話します。
南崎氏 BOMを作る部分は、基本的にパッケージ製品でやったほうがいいんです。出来上がったBOMの情報をkintoneに持ってきて、いろいろなところで活用していくパターンが多い。そういう意味でも、連携していったほうが絶対いいです。
森 私たちがお話をいただくときは、基本的に情報システム部門が多いんですけど、製造業の場合、kintoneの問い合わせは現場から直接来るんですか。
南崎氏 現場からです。
それだけ、現場の発言力が大きいといいます。
南崎氏 製造業では、ものを作っている現場の発言力がとても大きいので、情報システム部門も現場の要望に合わせて動くことが多いんです。
ただ、現場から始まった取り組みも、途中で情報システム部門が加わります。
南崎氏 現場がデータ化を進めると、基幹と連携したいという話になるので、結果的に情報システム部門も合流してくるケースが多いんです。情報システム部門と合わせてください、と言うと、一緒に巻き込んでやりましょう、という形になります。
ASTERIA Warpの場合は、問い合わせてくる部門と、恩恵を受ける部門が分かれています。
山脇 ASTERIA Warpは、圧倒的に情報システム部門からの問い合わせが多く、やり取りや管理をするのも情報システム部門です。ただ、その恩恵を受けて課題が解決しているのは、現場の部門であることが多いんです。
相談の来る部門は逆でも、最後に行き着くところは両社で同じでした。
森 たまに現場の方から連絡が来ることもありますが、なんだかんだで情報システム部門が出てきます。
南崎氏 一緒です。
取材の様子
その先で出てくるのが、誰が作り、誰が管理するのかという問いです。
南崎氏 kintoneに限った話ですが、(現場と情報システム部門の)どちらがアプリを作るのか、という問題もあったりします。
森 情報システム部門に期待するところで言うと、基幹システムまわり、ERPのデータの管理をちゃんとやっていく、ということでしょうか。
南崎氏 そうですね、ただ、システムを持っているのは情報システム部門でも、使うのは本当に現場の人たちなんです。
誰が作り、誰が管理するかを決めたうえで、使う現場にどれだけ寄り添えるか。それが、kintoneにもASTERIA Warpにも求められています。
製造業のAI活用は、まだ個人の範囲にとどまっていると南崎氏は言います。
南崎氏 工場の現場の人たちは、そもそも端末を持って仕事をしないので、AIとは関係ない、という話になります。デスクワーカーの人たちはAIを活用しましょうとなりますが、アイデア出しや要約など、個人利用にとどまってしまうんです。
南崎氏 分析したいという声はあっても、紙やExcelのところでデータ化できていないので、まずAIを使う以前の問題ですよね、という話になることがそもそも多いんです。
前編で南崎氏は、AIに自社を踏まえた答えを返してもらうには、会社の歴史と文化という文脈が要ると話しました。その文脈を集めてつなぐところに、kintoneとASTERIA Warpの役割があります。
森 kintoneで、今まで紙だったもののデータを集める。それを私たちがASTERIA Warpでつなぎ合わせて、AI-Ready(AIに使える形にデータを整えた状態)に持っていく。
最後に、南崎氏はこう話しました。
南崎氏 システム化して、AIがデータを活用できる状態になっているかどうかで、圧倒的に差がつく状況に、もうなっています。提案していて、お客様と接していて、すごく感じます。今からでも、kintoneでなくてもいいので、できる範囲でシステム化を進める動きは、ぜひ皆さんにやってほしい。それが企業としての財産になっていくと思います。
サイボウズ 南崎氏
サイボウズが主催する年に一度のイベント「Cybozu Days Japan 2026」が、2026年11月12日(木)・13日(金)に幕張メッセで開催されます。kintoneと連携するサービスを提供する140社以上のパートナー企業がブースを出展するほか、ユーザー企業の担当者が登壇するセッションも多数予定されています。アステリアは、ASTERIA WarpとPlatio Canvas AIの両製品で出展します。
アステリアでは、kintoneとASTERIA Warpの連携事例を32社分公開しています(2026年9月時点)。
南崎 健太郎(みなみざき けんたろう)
サイボウズ株式会社 エンタープライズ事業本部 エンタープライズ営業部 現場QCD改善スペシャリスト。前職は住友電気工業で約8年、スマートフォン・パソコンメーカー向けのプリント回路基板の営業として、要件整理から量産立ち上げ、出荷後のクレーム対応までを担当。
山脇 宏夢
アステリア株式会社 パートナー営業部 第2グループ。サイボウズ担当5年目。
森 慶輔
アステリア株式会社 エコシステムサクセス室 副室長。
PM・SE・マーケティングなど多彩なバックグラウンドを持つ「データ連携」のプロフェッショナルが、専門領域を超えたチームワークで「データ活用」や「業務の自動化・効率化」をテーマにノウハウやWarp活用法などのお役立ち情報を発信していきます。
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