業務プラットフォームとして一時代を築き上げてきたIBM Notes/Domino(以下、Notes)。このNotesを新たな環境に移行する際に用いられるのがNotes移行ツールや関連ソリューションですが、実際にはイメージよりも簡単にはいかないようで。今回は、そんなNotes移行にまつわる現状を見ていきながら、Notes移行の考え方やNotes移行ツールの問題点、今取りうる最良の策について考えていきます。
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1989年の登場以来、企業における業務プラットフォームとして採用されてきたNotes。メールやスケジューラ機能を持つグループウェアとして社内のコミュニケーション基盤となっているだけでなく、リッチ・テキストの文書作成・保存をはじめ、アクセス制御、検索、リンクなどの機能を含めた「文書型データベース」として、多くの業務を支えるプラットフォームとしての役割も担ってきました。
2018年には新たなバージョン10リリースがアナウンスされているNotesですが、実はいまだに古いバージョンを長年更新せずに利用している企業は少なくありません。それは、業務基盤となるアプリケーション(NotesDB)が現場主導で数多く作成されており、新たなバージョンへの移行に多くの工数と費用が発生してしまうためです。また、バージョンアップしなければライセンスを無料で使い続けることが可能なため、仮想環境に古いNotes環境を移行し、業務基盤として延命させることを選択するケースも多いのが実態です。
しかし、Notes技術者の異動や退職によってブラックボックス化してしまい、Notes専門のインテグレーターも少なくなっている今、ちょっとした改修作業にも莫大なコストがかかってしまうのが現状です。時代への柔軟な対応も求められているなか、長年使い続けたNotesを新たな環境に移行することは、もはや避けられない状況だといっても過言ではありません。
そこで選択肢になりうるのが、SaaSとして提供されているグループウェアやコラボレーションウェアでしょう。ただしNotesは、開発プラットフォームとしての機能も持ち合わせており、簡単に移行できる代物ではありません。Notes自体の機能が豊富すぎるため、どうしても単一のプラットフォームやサービスですべての機能が実装できるわけではないのです。
そこで重要になってくるのが、既存環境の使い方をしっかりと棚卸し、その利用状況を適切に判断するための材料となるアセスメントです。アセスメントの結果次第では、移行先のSaaSが選択しやすくなるのは間違いありません。
また、Notesを新たなプラットフォームへ移行してくれる「Notes移行ツール」と呼ばれるものも存在しており、使い方によっては役立ちます。ただしデータ移行は可能でも、画面周りや日々の運用などはそのまま再現できません。クライアントサーバー型の仕組みをクラウドサービスにそっくり再現すること自体が困難なだけでなく、NotesDB内に格納されたファイルが持つアクセス権限が簡単に移行できないといった、Notesが持つ独自の機能にも移行を困難にする要因があります。いずれにせよ、どれだけNotes移行ツールが有用でも、手作業での移行を余儀なくされてしまうのです。
機能面だけの制約だけではありません。NotesDBでアプリケーションを丹念に作りこんできたがゆえに、その使い勝手の面で利用者から不満の声が上がることも少なくないのです。Notesに慣れてしまった利用者からは、未読既読の色分けといった見た目の再現性が要求されることもありますが、たとえ移行ツールを利用したとしても、まったく同じように再現することは難しいのです。
さほどコストのかからないものであればNotes移行ツールを試してみる価値がありますが、実は決して安価なソリューションではありません。あるツールを使う場合、移行先の環境を作るだけで数百万円、業務アプリとなるNotesDBの移行が1件あたり数万円と従量課金となっており、数百の規模でNotesDBが作成されている場合は数千万円の規模で投資が必要になるケースも。しかも、業務の見直しや既存環境に近づけるための環境整備に多くの時間を費やすことで、下手をすれば、億を超える移行プロジェクトになってしてしまう案件もあるほど。
だからこそ、同じコストをかけるのであれば、BPR(Business Process Re-engineering)を通じて今の時代にマッチした運用へと切り替えていくべきではないでしょうか。
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