ブロックチェーン特集:対談 Vol.01『これから学ぶ方でもよくわかる「ブロックチェーン」』
【中編】わかりにくい「ブロックチェーン」をわかりやすく。財部 誠一氏 × 平野 洋一郎

~わかりにくい「ブロックチェーン」をわかりやすく~財部 誠一氏 × 平野 洋一郎

インフォテリア代表の平野と経済ジャーナリスト財部誠一氏による対談企画の第2回、今回は第2回としてブロックチェーンの技術面にフォーカスし、解説していきます。
(前回の記事はこちら)

-財部氏 前回はブロックチェーンのいわばイントロダクションをうかがいました。続いては技術面について、分かりやすく説明をして頂きたいと思います。ブロックチェーンの特長として「ゼロダウンタイム」、「改ざんできない」、「データが消えない」の3点が指摘されます。素朴な疑問としてネット上にさらされながら「改ざんできない」というのは驚きです。それを可能にしている仕組みとはどんなものなのでしょうか。

ブロックチェーンでの記録方法

-平野 送金時の流れを例に説明します。まず、送金の処理を実施した際、コンピュータには「送金をした」という取引データが記録されます。金額面や時間情報などの付随情報も合わせてひと括りとし、一つの独立したデータ項目として記録をする、というのが既存のデータベースでの記録方法です。この方法では、データベースの管理者は取引データを個別に書き換えることが可能です。
一方で、ブロックチェーンはその取引データがチェーンのように数珠繋がりになっています。そして、その数珠の一つ一つのデータは独立しておらず、直前の数珠の取引主の秘密の鍵を使って電子署名をして作り出します。同様に、その次の数珠は今回の取引データの取引主の秘密の鍵を使って電子署名をして作り出します。このような連鎖構造になっているため、ある一つの数珠のデータだけを改ざんしたとしても、前後の数珠との整合性がとれなくなるので、改ざんされたことを容易に把握することができます。それなら、一部ではなく全ての数珠のデータを書き換えることも考えられるでしょうが、実行するには全ての数珠の秘密鍵が必要なため、たとえ管理者であっても不可能であり、仮に膨大な計算資源を使って全ての秘密鍵を解明しようとしても膨大な時間がかかることになります。その間に数珠は取引を通じ連鎖して追加されていくため、解明した時には既に意味のないものとなってしまいます。

-財部氏 非常に巧妙な仕組みなのですね。ただ、いまひとつわかりにくい。そもそも「電子署名する」という行為はどういうことなのでしょうか?そこが理解できないと前に進めませんね。

電子署名の仕組み

-平野 たしかに「電子署名」って分かりづらいですよね。基本的には紙での署名と同じように「そのデータが真正である」ということを証明するための仕組みです。そのために何をするかというと、当該データからある計算式で導き出される値をそのデータに付加します。この付加する行為を「電子署名」と呼んでいます。例えば、あるデータの内容が「ABC」であったとします。このデータを数値化すると、65、66、67という数値になります。そこにある計算式をあてはめます。簡単にするために単純な足し算と定義しましょう。つまり、65+66+67ですね。この計算結果は198ですから、先ほどの「ABC」というデータに198という数値を付加します。この198が電子署名です。もし「ABC」を「BBC」に改ざんしたとしたら、66+66+67となって答えは199となって署名と合わなくなり、このデータが真正なものでない、つまり改ざんされていると分かるわけです。
実際の電子署名では、計算式が複雑なだけでなく、元のデータに加えて独立した電子鍵のデータも併用して電子署名を作りますから、電子署名も捏造することができないのです。

-財部氏 なるほど、「電子署名」がはじめてよく分かりました。私が読んだ解説記事では「電子署名」の意味を説明しているものは一つもありませんでした。巧妙な仕組みで改ざんを実質不可能にしている、というところが非常によく分かりました。次に、「ゼロダウンタイム」というのはどういうことでしょうか?

中央集権型と分散型の違い

-平野 「ゼロダウンタイム」というのはダウンタイム、つまりシステムの停止時間が無いということです。24時間365日停止することなく動いていることです。例えば、ブロックチェーンの仕組みを使ったビットコインのシステムは稼動を始めてから7年間一度も停止していません。どうやってこれが実現されているかというと、「ピア・ツー・ピア」の仕組みによります。これは、従来の中央コンピュータがある仕組み(中央集権型)ではなく、多数のコンピュータが対等な立場で全ての取引データを保持(分散型)しています。そのため、特定のコンピュータが停止してもそのブロックチェーンのネットワーク上のコンピュータが1台でも稼働していれば、システムが停止しないのです。これまでのシステムは、コンピュータを停止させないために膨大なコストを費やしてきましたが、「ピア・ツー・ピア」では、コンピュータは壊れるものと考えて代替がいつでもある状態を作っているので、システムが停止することが無いのです。

-財部氏 中央集権型ではなく、分散型だからこそ実現できるのですね。では最後の「データが消えない」とはどのように実現されているのでしょうか?

-平野 これも、いま説明した「ピア・ツー・ピア」の仕組みで実現されています。ネットワーク上で参加している全てのコンピュータが全ての取引情報を保持していますから、1つのコンピュータでブロックチェーンのデータが消失しても、ネットワーク上で1つでもブロックチェーンが残っていれば、データは消失しないということです。この仕組みがあるため、データのバックアップも不要なのです。

-財部氏 なるほど、よく分かりました。ありがとうございます。それでは続けてインフォテリアの今後のブロックチェーンに関する取り組みについて聞いてみたいと思います。

まとめ

今回はブロックチェーンの技術部分についての説明を取り上げました。エンジニアからマーケターのキャリアを経ている平野ならではの噛み砕いた話に財部氏の疑問も解消し、ブロックチェーンやこれまで謎であった電子署名に対する理解が深まった、ということでした。次回はインフォテリアのブロックチェーンにおける今後の取り組みに話は移っていきます。



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