AIエージェント、DeepSeek、Deep Research…2025年も生成AIの進化が止まらず、関連ニュースが話題を集めています。日々発信される新しい情報を追うだけでも大変で、業務に適用するのはハードルが高いと感じている方も多いのではないでしょうか?
企業の現場では、生成AIの活用が求められているものの、「何から手をつければよいかわからない」「社内データが整備されておらず活用が難しい」「無料ツールの利用による情報漏洩リスクが心配」と悩まれるケースが増えています。
そこで本セミナーでは、最新の生成AIトレンドや活用シーンを押さえつつ、社内データを有効活用するRAG(Retrieval-Augmented Generation)について解説しました。企業が実践できる具体的なアプローチとして、プログラミング不要なノーコードツールを利用した構築方法やメリット・デメリットも合わせてご紹介しておりますので、「自社で生成AIを安全かつ効果的に活用する方法」を知りたい方は必見の内容です。
本レポートは、2025年3月26日に開催したオンラインセミナー「生成AIでデータ活用を次のステージへ!〜ビジネス利用を促進する鍵とは?」の内容をもとに、以下のポイントを解説します。
本セミナーはオンデマンド配信中です。こちらからご覧いただけます。
目次
生成AIの最新動向として、DeepSeekの登場とその影響、AI検索エンジンの進化、AIエージェントの概念と応用例についてご紹介します。
2025年初頭の大きなニュースとして「DeepSeek R1」のリリースが話題となりました。内容の詳細まではわからずとも、名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。DeepSeek R1は、無料(MITライセンス)で商用利用が可能です。性能はOpenAIの「o1」に匹敵すると言われています。Web検索、「深く考える」機能、写真OCR、画像OCR、ドキュメント添付などの機能を持ち、トレーニングコストがo1の約3%という報道も衝撃を与えました。関連株式の大幅な下落もニュースとして話題に挙がった要因のひとつではありますが、今後の生成AIに大きく貢献するであろう「強化学習」と「蒸留」という技術も注目に値します。
DeepSeekについて詳しく知りたい方は、以下のサイトに別途記事を上げておりますので、ご覧になってください。
生成AIのサービスのひとつとして「AI検索エンジン」と呼ばれるものが2024年後半から登場しはじめています。Perplexity、Genspark、FeloなどWebを検索し、レポート形式でまとめてくれるサービスなどもリリースされており、制限はあるものの無料で利用可能なツールとして人気を博しています。
AIエージェントは、「特定の目的」のために必要なシステムと「連携」しながら「自律的」に処理を行ってくれるAIシステムです。
AIエージェントは設定された目的を果たすため、自ら細かなタスクを作成、必要なシステムを利用しつつ処理をこなします。目的を持っていない汎用的なものは現時点ではAIエージェントと呼ばれていないことが多いようです。
またAIは学習過程で学んだ範囲から逸脱する内容には答えてくれませんが、外部との連携でこれを克服します。Webの検索などが連携先として代表的ですが、様々なサービスや社内のDBやシステムとの連携も必要であれば利用するのがAIエージェントです。
利用用途としては、議事録自動作成〜承認フローの申請や、スケジュール作成〜チケットの手配、調査実施をしてのレポート作成など、多岐にわたって応用できます。
OpenAIからはSDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)がリリースされているため、自社システムにAIエージェントや、その一部の機能を追加実装することも可能になり、今後多くのサービスや社内システム構築案件でAIに関する機能追加が予想されています。
実際、生成AIはどのような業務で使われているのでしょうか?
企業における生成AIの活用状況は総務省の「令和6年版情報通信白書」(*1)によると、下図のように多岐にわたっていることがわかります。特に、議事録生成や資料作成の補助など、社内の事務的な仕事での活用が目立っています。
よく聞く活用事例として、社内の資料を読み込ませたチャットボットの作成や、音声情報から会議の議事録の作成、プログラムの開発現場ではエラーの修正箇所や修正方法の提案などがあります。
企業情報の活用方法として、RAG(Retrieval Augmented Generation:検索拡張生成)が注目されています。RAGはAIモデルに直接学習させるFine-Tuning等の方法に比べて、環境の準備やコスト等の面でメリットがあり、企業の関心が寄せられている技術です。
RAGはユーザーから入力された質問に対して、社内のデータベースで関連情報を検索し、アプリケーションに提供します。アプリケーションは事前に学習したデータとデータベースから提供された情報を組み合わせてLLM(Large Language Models:大規模言語モデル)に提供することで、回答を出力します。
RAGを利用すると、生成AIの利用で懸念されるいくつかのデメリットを軽減することができます。企業で生成AIを利用するにあたって大きな懸念となるのが、情報の流出、漏洩といった問題です。RAGは社内に置くVectorStoreと呼ばれるデータベースに情報を入れておく仕組みなので、すべてが流出するわけではありません。また、特定のLLMに依存する仕組みでもないため、例えばOpenAIのLLMからGoogleのLLMに切り替えることも容易に行うことができます。新しいLLMがリリースされればいち早く切り替えることで簡単に性能の向上を見込むこともできます。
RAGを利用するには、何らかの開発が伴います。画面系であるユーザーインターフェースの準備や、LLMやVectorStoreの選定、アプリケーション部分のプログラム作成など、多岐にわたります。
データベース、VectorStoreに関しては選定して環境を準備するだけではなく、入れ込むデータの準備も必要となります。VectorStoreはその名の通り、ベクトル形式のデータを保存しておく仕組みです。最終的には先ほどの説明のようにプロンプトへ参考情報として差し込むため、あまり長すぎる文章では効率が良くないため、チャンクと呼ばれる単位に分割します。分割したチャンクは情報をベクトル化し、意味合いの近しいものが近似値になるような変換を行って保存しておきます。
データをベクトル化して保存するVectorStoreには、様々な製品・サービスが存在します。特徴も多様な製品があるため、用途に合わせて選定する必要があります。
RAGの構築には、LangChainなどのフレームワークや、ReactなどのUI環境がよく使われます。ノーコード環境(プログラミング言語での記述ではなく、直感的な操作でアプリケーションの開発が可能なサービス)としてDify等も便利です。
実際の環境構築としては、比較的簡単なノーコード環境と本格的な社内RAGシステムの幅があり、自社のリソースに応じて検討する必要があります。ノーコード環境の一例である「Dify」では、VectorStoreやEmbedding、入力画面がセットになっているためAWSなどのプライベートクラウド上に構築する方法が一般的です。
本格的な社内RAGシステムでは、製品選定やプログラム作成に多くの工数が必要となり、LLMを置くサーバーにはGPUが必須で導入コストが高額になります。
RAG環境を設置して終わりではありません。実務で使えるレベルにするために、RAGの精度は重要です。精度を高めることで曖昧な内容を質問しても実用的な回答を得やすくなり、社内でのAI活用が促進されます。
RAGの精度を高めるためには、複数の方法を試行錯誤しつつ進めていく必要があります。プロンプトやロジックの見直しの他、読み込んでいる社内文書の見直しが必要になることもあります。また、「よくある質問」を追加の情報として作成するのも精度の向上に貢献する方法です。
ノーコードツールは、プログラミング言語でコードを書かずにアプリを作成できるツールです。DifyやLangFlowなどの生成AIに関連するノーコードツールが多くリリースされています。これらのツールを使うことで、技術者やプログラマーでなくとも、プロンプトの変更やLLMの変更などを試行錯誤しながらシステムの品質向上を図ることができます。
生成AIを活用した事例についてご紹介します。
弊社ではユーザー交流サイト「Asteria Park」にて、自動質問応答の仕組みを実装しています。定期的に書き込みを取得し、回答を生成することで、ユーザーの利便性を向上させています。
ユーザーサイトでは、Difyで作製したAIアプリケーションとユーザーサイトを仲立ちする連携をデータ連携ツール「ASTERIA Warp(アステリアワープ)」で実現しています。Difyではどうしても足りなくなってくる機能やデータを格納する際の加工変換など、20年のナレッジと1万社以上の導入実績を誇るASTERIA Warpを使うことで補完した仕組みとなっています。
生成AIのビジネス活用として真っ先に思いつくであろう「社内情報を使った独自チャット」を実装するため、注目されている「RAG」ですが、実際に構築するためには知識や準備が必要です。お持ちの社内情報がそのまま使えず、大きく変換する必要もあるかもしれません。また、環境構築しても社内利用が促進されないといった問題も散見されます。
これらを解決するひとつの鍵がノーコードツールと考えられます。RAG構築を予め考慮されたツールもあり、ある程度のリテラシーや知識は必要となりますが、プログラム知識までは必要としません。また、構築後、品質向上の試行錯誤にも画面操作で対応できるノーコードツールが活躍します。
ひとつのツールですべて解決するとも限らないので、用途に合わせてツールを使いこなしていくこともポイントのひとつでしょう。
一番避けたいのは開発会社に丸投げすることです。構築して終わりではないため、自社の品質向上には自社の人間が携わるようにし、継続的にメンテナンスを行うことが必要です。利用する社員側もリクエストが反映されれば当事者意識が芽生えてきます。会社全体で携わって良くしていこうという会社が生成AI導入の成功を収めています。
本セミナーで紹介したASTERIA Warpは、ノーコードでシステム間のデータ連携や前処理を実現できるツールです。また、アステリアでは生成AIの業務活用を支援する「AI活用変革センター(AITUC)」を設立し、導入支援やPoC設計など幅広くサポートしています。詳細は以下よりご覧ください。
本セミナーはオンデマンド配信中です。セミナー内ではデモも行っておりますのでぜひご覧ください!
ASTERIA Warpシリーズ担当のシニアプロダクトマネージャー。ホワイトペーパーの執筆のほか、開発経験を活かしたASTERIA Warpを使ったデモ作成等を実施。
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