エスペック株式会社様(以下、エスペック)では、国内の生産拠点と海外販売を担う代理店間で情報共有する上で、情報提供の頻度の少なさや情報鮮度の低さなど様々な課題を抱えていました。そこで、海外からでもアクセス可能なクラウド上に情報サイトを構築し必要な情報のみを自動で抽出・加工して展開、代理店とのスムーズな情報連携を実現された事例についてエスペック 山田様よりご紹介いただきました。
目次
エスペックは、最先端技術の発展を支える「環境試験器」のメーカーです。環境試験とは、周囲の環境(温度、湿度、圧力、電磁波など)が電子機器や工業製品に及ぼす影響を分析・評価し、製品の耐久性や信頼性を確認するための試験です。
世界45か国を網羅する海外販売ネットワークで世界中のお客様に環境試験に関する高品質な製品・サービスを提供しています。
エスペックでは2005年頃、社内システムをオープン化する際に、データ連携処理の開発標準化や可視化を目的としてASTERIA Warp(当時 ASTERIA 3)を導入しました。
現在も基幹システムとして使用しているOracle Database内にある販売システムや生産システムなどの各種テーブルからのデータ出力やシステム間連携にASTERIA Warpを活用しています。
それでは、1つ目の事例を紹介します。
2014年頃、国内と海外販売代理店との間で情報共有体制の見直しが行われました。それまでは、海外販売代理店は社内システムにアクセスできないため、国内の担当者が定期的に必要な情報をまとめたメディアを作成し海外へ郵送していました。
この運用では郵送に時間がかかるため、提供している情報が海外に到着する頃には古くなっているという問題点がありました。また、毎回担当者が手作業でデータ作成・加工・メディア配布を行うため業務負荷が高いことも問題点として挙がっていました。
しかし、改善を行う開発要員の不足や検討する時間的余裕がなく、メディア配布による運用が続いていました。
見直しが行われ、運用を改善するために必要とされたのは以下の3点です。
人の介在を最小化するITソリューションを検討することになりました。
“リアルタイムで社外にデータを公開できるセキュアな環境”を海外拠点回線からもアクセス可能なクラウドサービス「Microsoft SharePoint Online」「Azure SQL Database」を用いて構築し、”低コスト、短期間でシステムを構築する開発手段”として開発未経験者でもアプリケーションが作成できる開発ツール「Microsoft Visual Studio LightSwitch」を採用。そして、”手作業で行っているデータ抽出・加工を自動で行う仕組み”をASTERIA Warpで構築しました。
構築した情報共有システムはスライドの通りです。ASTERIA Warpでオンプレミスの社内システムから必要なデータを抽出・加工しAzure SQL Databaseにアップロードします。Microsoft SharePoint Online上にMicrosoft Visual Studio LightSwitchで開発したアプリケーションを配置しAzure SQL Databaseのデータを公開しています。海外販売代理店の担当者は、Microsoft SharePoint Onlineにアクセスし事前に発行したアカウントでログインしてデータを検索・閲覧することができます。
当時はアマゾン ウェブ サービス(AWS)やMicrosoft Azureなどのクラウドサービスが本格的に普及し始める前でオンプレミス環境とクラウド環境をデータ連携する事例は少ない状況でしたが、ASTERIA Warpは最新のクラウドサービスにも対応していて驚きました。
Microsoft SharePoint Online、Azure SQL Databaseを選択した理由も紹介します。
Microsoft SharePoint Onlineは元々社内ポータルサイトとして使用していたため、アクセス制限などのノウハウがあったため採用しました。データベースについてはAWSとMicrodoft Azureの2つを比較検討したところ、Microsoft SharePoint Onlineとの親和性を考慮してAzure SQL Databaseを選択しました。また、ASTERIA Warpの標準機能でAzure SQL Databaseのデータ入出力に対応していたことも大きな採用理由のひとつです。
オンプレミス環境とクラウド環境の連携は初めての試みでしたが、親和性の高いツールを選定したこともあり、想定していたよりはるかに容易に環境を構築することができました。
2つ目の事例を紹介します。
エスペックでは定期的にパソコンや携帯電話などのIT機器の棚卸しを行っています。棚卸業務は紙を使用しており、IT機器リストの印刷、封筒詰め、各利用部門へ配布、利用者が回答した紙の回収、集計作業をすべて手作業で行っていました。
数百枚に及ぶリストの印刷や配布、集計を行うため、複数人でも数日かかる膨大な手作業が発生し業務を圧迫していました。
システム化するべき業務ではありましたが、IT機器は社内だけでなく社外利用者もいるため、社外からのアクセスも考慮する必要があり容易にシステム化することができませんでした。
そこで、Azureを用いた情報共有システムを応用し、社外からも棚卸データにアクセスできる環境を構築しました。
Microsoft SharePoint Onlineにある棚卸し用Webサイトにアクセスすると、ログイン情報を元に利用者のIT機器の一覧が表示され、棚卸回答ができるようになりました。
このシステムはIT機器棚卸だけでなく、メールアドレスやシステム権限などの利用者のアカウント情報の確認などにも使用しています。1つの画面でIT機器やアカウントの利用状況などをすべて管理できるようになり、担当者の業務改善だけでなく利用者の利便性も向上しました。
ASTERIA WarpとAzure連携でデータ共有環境を構築したことで、それまで問題になっていた手作業を改善することができました。
ASTERIA WarpはAzure以外にも多数のサービスと連携可能なので、今後も新しいサービスを導入した際にはASTERIA Warpを使って業務改善に役立てていきたいです。
また、コロナ禍においてテレワークが推進され、エスペックでもほとんどの社員がテレワークをすることになりました。その際、在宅勤務者が社内システムのデータにアクセスする場合にもASTERIA Warp-Azure連携のデータ共有環境を活用することができました。
社外から社内のデータを閲覧できるということは危険性もありますが、データ共有環境があることで業務改善できることが増えたので、この環境ができたことは大きな成果であると考えています。
今後の課題として、ASTERIA Warpのバージョンアップを検討しています。既存の処理や環境の見直しや新バージョン下での処理の動作検証などを進めていく予定です。
――海外からデータを提供する場合にセキュリティ観点でどのように対応されたでしょうか。
まず、各海外代理店とは秘密保持に関する契約を締結しています。そのうえで、利用する方の個人名を挙げていただき、ひとりひとりにアカウントを発行しています。配布したアカウントは定期的に棚卸しを行って余分なアカウントがないように運用することでセキュリティを確保しています。
――当時、クラウドサービスの黎明期でASTERIA Warpとパブリッククラウドの連携に関する情報もほとんどなかったと思いますが、Azureクラウド環境への接続設定において苦労された点をご教示ください。
実は苦労したことはありませんでした。ASTERIA Warpの技術情報サイトの説明と実際のASTERIA Warpの画面を見比べて接続情報を登録したら、すぐつながりました。連携するまでは、オプション機能の購入が必要になるかもしれないとも考えていたのですが、標準機能のデータベース接続で簡単に連携できて良かったです。
――データ共有環境を構築された以前からノーコードツールを積極的に活用していたのでしょうか。
いえ、社内で使っていたノーコードツールはASTERIA Warpくらいでコーディングして作るのが基本でした。今回の事例で初めてノーコードツールを活用してみて、有用性を実感しました。すぐ開発が完了してとても驚きました。
社外への情報共有は多くの企業で発生する課題かと思いますが、一つの解決策としてAzureを用いたデータ共有環境構築事例をご紹介いただきました。クラウド連携がまだ一般的でなかった当時の苦労や最近のテレワーク対応での活用までお話いただきとても参考になりました!
より詳細な内容はセミナー動画でご覧いただけます!
ASTERIA Warpのプリセールや体験セミナー講師を担当しつつ技術から営業スキルまで、上司の下で日々勉強中の通称”ナガタ”です。
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