ここ数年で大きな話題になっているRPA(Robotic Process Automation)ですが、企業におけるRPA実装のプロジェクトを見ていると、決して順風満帆とは言えない状況が続いているようです。それは、RPAであればどんな業務でも自動化できる“魔法のツール”になりうるという誤解が広がったことで、かなりの確率で炎上してしまっていることに起因しています。なぜそのような状況に陥ってしまうのでしょうか。今回は、そんなRPAの誤解を解き、その本質を理解しながら、有効活用するための方策とその取り組み方について紹介します。
RPAとは、人が業務端末などで行うクリックやコピー&ペーストなどの定型作業を、ソフトウェアによって代行する仕組みのこと。ただし、財務会計パッケージのような、いわゆる業務特化のソフトウェアとは大きく異なり、登録や参照、審査、判定、レポーティング系業務などその適用領域は幅広く、人が行う業務はすべてこのRPAの対象となってきます。だからこそ、一般的な労働者と同じ業務を行うという意味で、RPAは仮想労働者(デジタルレイバーとも評されています。
特に業務をカスタマイズする傾向にある日本では、現場に残る属人的な業務を代行してくれるツールとして、そして、少子高齢化のなかで労働力不足という社会問題を解決してくれるツールとして、過度な期待とともに注目されているのが現状です。確かに、RPAによって8000時間分の事務処理作業を削減することに成功した金融機関などの事例も報告されており、高いROIを発揮する経営技術の1つとして位置づけられることも少なくありません。
そんな具体的な効果を発揮するRPAですが、なぜ現場に落ちてくるとプロジェクトがうまくいかなくなるのでしょうか。それは、RPAに関する本質的な理解のズレが大きな理由の1つに挙げられます。
RPAのプロジェクトは、現場の業務改善を目的に“システム”として検討することが一般的で、プロジェクトの主管部門が情報システム部門になるケースが多く見られます。ただし、RPAは仮想労働者と呼ばれるように、人の業務を代行してくれるロボットであり、決してITのソリューションではありません。言い換えれば、精度の高い自動化を目指す“IT的なアプローチ”ではなく、代行業務として労働者を現場に派遣する“HR的なアプローチ”が必要な仕組みなのです。その理解が不足した状態で一般的なITツールのように業務の自動化を目指していくと、結果として、プロジェクトが停滞し“炎上”することになってしまうのです。
実際にメールの誤送信を防ぐためにRPAのロボットでメールをチェックしようとした事例では、すべての誤送信パターンをRPAによって定義することが難しく、一般的なシステムのように100%に近い形で品質が担保できなくなり、導入してもエラーが頻発することで、結果としてプロジェクトがとん挫したという話もあります。RPAはあくまで座標やオブジェクトとして認識された送信ボタンを、24時間休むことなく繰り返し押すことができるだけ。すべてのトランザクションのパターンや画面操作が要件定義できない以上、IT的なアプローチにはなり得ません。
RPAは人が行っている業務の代行であり、基本は人の手足と同じ位置づけです。つまり、人間の動作を記録し再生し続けることが可能なレコーディングツールというのが、現時点におけるRPAの本質なのです。最近では高齢者住宅に監視用のセンサーを取り付け、認知症の方がエレベーターホールに来たら顔画像情報と照合して判断し、デジタルレイバーが電話をサポートに掛けるといった、人間の目にあたるセンサーとの連携を行う実例があります。これも、画像照合技術や人を判断するための頭脳が別途必要で、そこで判断された結果をRPAが手足となって動かしているわけです。つまり、RPAを生かすためには、業務に特化した仕組みや他のシステムを連携するための仕掛けを構築することが必要になってきます。
プロジェクトを炎上させないためには、あくまで人とコンピュータを仲介するGUI部分を自動化してくれるツールであるというRPAの本質を理解したうえで、本来の目的を実現するためにどんなIT技術と組み合わせるべきなのか、十分に検討していく必要があります。CRMやSFAなど業務に特化した仕組みと連携させていかなければ、RPAによって入力部分の一部が省力化するだけで、業務改善としての大きな効果は期待できません。
そこで大きな役割を果たすのが、ASTERIA Warpに代表されるEAIをはじめとしたデータ連携ソリューションです。EAIは、ERPを含めたさまざまな業務アプリケーションに対して直接アクションを起こせるアダプターを豊富に備えており、従来型の「HRの観点から実現するRPA(以下 HR-RPA)」に対して、APIやライブラリ等を利用する「IT技術の観点から実現するRPA(以下、IT-RPA)」と位置付けることができます。これら、HR-RPAとIT-RPAを組み合わせることで、GUI部分からDBとの直接やり取りやAPIによるアプリケーション連携まで含めたミドルウェア部分まで、ノーコードで情報の更新や参照など高度な処理が実現できるようになります。フロント部分のRPAとミドルウェアとしてのIT-RPAが持つ技術を融合させれば、これまでにない優れた経営技術として活用できるようになり、生産性の低い業務における労働課題を、ダイレクトかつカジュアルに解決できる可能性を秘めているのです。
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