マスターデータマネジメント(MDM)を重要視している企業は多いのに、きちんと実践できている企業は少ない--。これが国内におけるMDMの現状だと言われています。
前回の「マスターデータ管理(MDM)とは?」で紹介した通り、マスターデータは「企業活動を継続する上で欠かせないもの」、「企業活動を通じて多大なコストをかけて積み重ねてきた最も重要な資産の一つ」です。にもかかわらず、なぜかマネジメントできていない。今回は、その理由について、少しずつ紐解いてみましょう。
かつて商品マスターや取引先マスターを台帳やホストコンピュータで管理していた時代、マスターデータは社内に一つしか存在しないというのが普通でした。ところが、現在はまったく事情が異なります。
皆さんの社内を思い浮かべてください。皆さんの会社にマスターデータはどのくらいあるでしょうか?
ここでいう「どのくらい」には、二つの意味があります。一つは、従業員マスターや顧客マスターといった「種類」。もう一つは、それぞれの種類のマスターがデータベース内のデータやファイルの形式で存在する「物理的な数」です。
冒頭で述べた「きちんと実践できている企業は少ない」のが事実だとすれば、恐らく、「種類」と「物理的な数」のいずれについても、当てることが難しいのではないかと思います。
例えばマスターデータには多くの種類がありますが、大きく分けると以下のような「ヒト系マスタ」と「モノ系マスタ」の2つに分類することができます。
例)ヒト系マスタ | 例)モノ系マスタ |
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このように、一言でマスターデータと言っても多種多様であり、それぞれが異なるシステムで管理されています。情報システムの分散化が進む昨今、これらのマスターデータを一元管理することはますます難しくなっているのです。
マスターデータを把握しきれていない最大の理由は、情報システムの「分散化」です。各システムや各業務で個別管理(サイロ化)しているため、社内共通の正マスタがどれか分からない、つまり社内で一元的なマスタ管理ができていないのです。具体的に見ていきましょう。
紙の台帳やホストコンピュータでマスターデータを管理していた時代と違い、今では、同種のマスターデータでも、社内のあちこちのシステムに散在するようになりました。そのため、マスターデータの実態を正確に把握するのが、年々困難になっているのです。
例えば、従業員マスターはどうでしょう。一人の従業員に関する情報が、人事システムや経理システムなど複数のシステムで管理されています。
ここで、もう一つ質問です。皆さんの社内にある複数のシステムに分散して存在する顧客マスターのうち、「正」のマスターデータはどれでしょうか?「正」というのは、それを見れば全ての情報が網羅されており、他のマスターデータの基準になっているものです。
「それは簡単だ。ホストコンピュータで利用しているマスターデータが正のマスターだ」と回答されるかもしれません。しかし、本当にホストコンピュータの顧客マスターは、顧客に関するすべての情報を網羅していますか?
多くの場合、社内システムは、その用途(業務)に必要な情報(管理項目、レコードなど)のみを管理しているはずです。また、当然ながら、それぞれのシステムを構築した時期によって管理項目は少しずつ変化しているのが一般的です。
そのため、一つのシステムのマスターデータで全ての情報が管理されていることは、ほとんどない。あらゆる社内システムのマスターデータが全て同一であるということも、まずない。そう言い切ってもよいと思います(いや、うちの社内では一元化できているという方は、以降を読んでいただかなくて大丈夫です)。
つまり、情報化が進んで利便性が高まった一方で、正確なマスターデータが何なのかを把握しづらい状況が生まれたわけです。データ処理の中枢となるマスターデータが分からない。そんな状況を放っていて、何も問題が起きないはずがありません。
今回は、分散化がもたらしたマスターデータの現状についてご説明しました。昔と違い、現在は情報システムが社内のあちこちに点在しており、マスターデータの「種類」と「物理的な数」を把握できていない企業も見受けられます。
では、何が正マスターであるかが判明すればいいのでしょうか?
実はそうではありません。マスターデータにはもう一つ大きな問題が潜んでいます。この問題については、次回のMDMコラム【入門編】第3回で詳しくご説明します。
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