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「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と定義されるデジタルトランスフォーメーション(DX)。企業がDXを実現していくためのステップとして、DXを提唱したエリック・ストルターマン氏が示したのが次の3つのステップです。
そして、第1フェーズ(デジタイゼーション)に続く第2フェーズ(デジタライゼーション)は、本格的なDXの推進に向けた準備段階に位置づけられ、デジタル技術を活用して製品やサービスの付加価値を高めたり、業務の中にデジタル技術を取り入れて効率化したりする状態をめざしていきます。
なお、第1フェーズのデジタイゼーション(Digitization)についての詳細は以下の記事をご覧ください。
この第2フェーズであるデジタライゼーションは、第1フェーズのデジタイゼーションでデジタル化された業務プロセスを踏襲しつつ、ITで業務を代替させ、自動化させることで、業務のさらなる効率化を実現していきます。たとえば、各業務システム内にあるデータを利活用し、システム間のデータ連携を加速させることで労働時間を大幅に削減したり、人的ミスを減らして作業品質の向上を図ったりするなど、デジタル技術を利用することで、これまでにはなかったビジネス上の付加価値を創出します。
RPA(Robotic Process Automation)をはじめ、システム間のデータ連携を実現するためのツールなどを駆使することで部署間をまたぐワークフローをデジタル化することも含まれます。
こうしたことから、デジタライゼーションは「攻めのデジタル化」ともいわれます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、ITと業務の現場が一体となって改善活動を継続しながら、最適なビジネス環境を維持できる状態を指します。具体的には、AIやIoT、ブロックチェーンといったテクノロジーを駆使し、様々な機器やシステムから取得した膨大なデータを分析、処理しながら新たなビジネス価値を生み出すことができる環境が整備されます。第2フェーズのデジタライゼーションはデジタルトランスフォーメーションを実現するための手段とも言えます。
第3フェーズのデジタルトランスフォーメーション(DX)についてはこちらの記事で解説しています。ご興味ある方はご覧ください。
デジタライゼーションの具体例には、どんなものがあるかを見ていきましょう。
工場のIoT化により、製造工程をモニタリング可能にすることが挙げられます。どの製品がどの工程にあるかがリアルタイムにモニタリングされるほか、製造装置の稼働状況も可視化され、製造効率が高まります。また、受注から製造、納品、請求などすべての過程で製品に関するデータが統合され、必要に応じてデータ分析が可能になります。
検品やピッキング、送り状の作成、発送などの業務プロセスがワークフローとして統合されます。データが統合された結果、各プロセスで用いる伝票が統一されるだけでなく、荷物の状況がリアルタイムに確認できるようになります。
店頭に導入されたPOSレジにより、販売データをもとに、受発注システムが確立され、販売動向をデータをもとに捉え、売上管理だけでなく販売管理が自動化されます。発注はデータをもとに行われるため欠品や余剰在庫の最適化が図られるようになります。
業務全体でワークフローを構築し、取引で発生するデータが連携する他の業務システムに自動的に入力され、業務処理が行われます。また、RPA(Robotic Process Automation)により定型業務が自動化され、担当者はより付加価値の高い仕事に注力できるようになります。
MA(Marketing Automation)ツールによって見込客を管理し、資料請求など見込客に重要な動きがあったときに担当者に通知が来る設定により、見込客に対して適切なタイミングで適切なアクションがとれるようになります。
商談管理システムによって、顧客に対する商談進捗状況がデータで管理され、適切なタイミングでの顧客対応が可能になります。また、オンライン商談ツールで商談の様子を録画・管理することで、データによって上司やトップ営業マンの振る舞いを学ぶことができるようになります。
デジタライゼーションによる効果を紹介します。
第1に「既存の製品やサービスの付加価値創出」が挙げられます。製品の製造から供給に至るビジネスプロセスがデジタル化され、リアルタイムにモニタリングされることで業務が効率化されます。
第2に「自動化による時間やコストの削減」です。業務プロセスの自動化が進み、各プロセスでデータが連携され、統合されることで、人的作業が減り、時間短縮やミスの軽減、全体の作業時間やコストを削減することができます。
業務自動化については、以下の記事でも紹介しています。
そして、デジタライゼーションが実現することで、DXの第3フェーズである「業務がITへ、ITが業務へとシームレスに変換される状態」にシフトし、データの利活用によって新たなビジネス価値を生み出すことができるようになる準備が整います。経済産業省が発表した「DXレポート2」では、「DXの推進は必ずしもフェーズ1から実施検討するものではない」とされているものの、DXを本格的に推進、実現するにはデジタライゼーションの実現が不可欠と言えるでしょう。
DXの第3フェーズはこちらの記事で解説しています。
上述した「DXレポート2」で示されている、DX成功パターンとしての「DXフレームワーク」に沿って、製造業における「デジタライゼーション」を考えてみます。
第1フェーズ(デジタイゼーション)で「製造装置の電子化」に取り組み、第2フェーズ(デジタライゼーション)では、製造に関する業務プロセスのデジタル化がさらに進みます。たとえば、ソフトウェア上で製造プロセスがシミュレーションできるようになり、職人の「匠の技術」がデータ化されます。また、実際の製造現場での試行錯誤を減らし、ファーストロット生産までの時間が短縮される効果が期待されます。
デジタライゼーションの進め方のポイントとしては、市場が求めるニーズの変化にスピーディに対応する「スピードの確保」が挙げられます。たとえば、システム開発をすべて外注で進めてしまっては、コストだけでなく時間もかかり求められるスピードが確保できません。そればかりか、DXに求められる「ノウハウが自社に蓄積されない」「開発途中で問題点に気づきにくい」「開発途中の修正にも応じてもらいにくい」といった問題も挙げられます。
こうしたことから、ソフトウェア開発は内製化していくことが望ましいといえます。そこで役立つのが、各システムをAPIで連携するノーコードの「データ連携ツール」や、画面上のオブジェクトなどを認識し人の動きを代行する「RPA」などのツールです。
特に、データ連携ツールは、基幹システム内のデータをうまく生かしながら、負担なくシステム開発を行うことができるツールです。コードをまったく書かずにアプリケーションを開発できる「ノーコード」のデータ連携ツールを活用すれば、プログラミングの専門スキルを有さない非エンジニアであっても基幹システム内に蓄積された情報を取り出して別のシステムに展開するといった、企業内で重要な情報資産であるデータ活用を前に進めることができるようになります。
非エンジニアによるデータ活用の内製化については、以下の記事でより詳しく解説していますので合わせてご覧ください。
また、GUIを用いて簡単にシステム同士を連携させることができるため、既存のシステム部門の人的リソースをフル活用し、現場や顧客の要求に応じたシステム開発が可能になるでしょう。
こうしたツールを有効活用することで、社内にもソフトウェア開発をはじめとした IT ノウハウがしっかりと蓄積できるようになり、業務の課題を解決して業務プロセスを変革することや、新たなビジネスモデルやサービスなどの価値創出をスピーディに実現していくことができるようになるはずです。
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