株式会社 テレビ朝日
技術局 設備センター
浅見 聡氏
大容量データの配信処理時に処理遅延やエラーなどが発生
「報道ステーション」「相棒」「ドラえもん」など多くの人気番組を抱えるテレビ朝日。番組は1年365日休むことなく、ほぼ終日放送されているが、それらは多くの情報システムによって支えられている。同社では、番組編成やCMの管理を行う営放システム、視聴率管理システムなどTV局独自のシステムのほか、社員向けの各種業務、会計、人事給与といった多くの一般的なシステムが稼働。互いにデータ連携(EAI)ツールで接続することで、放送事業を滞りなく進める仕組みを構築している。
「システムの連携目的は大きく3つ。1つめが『全国23の系列局への番組編成データの送受信』、2つめが『視聴率調査会社など社外からのデータの受信』、そして3つめが『会計、人事給与などの社内システム間のデータ同期』です」と同社 技術局 設備センターの浅見 聡氏は説明する。
同社内ではこの3方向への連携システムを「PrismDJ」と呼び、海外製EAIツールを中核に据えて運用してきた。しかし近年、そのシステムにはある問題が生じていたという。
「たとえば、系列局へ大容量の番組編成データを配信する際など、EAIツールの処理性能をオーバーしてしまうことがあり、送信に時間がかかったり、メモリ不足による送信エラーが発生したりすることがあったのです」(浅見氏)。
番組編成データとは、放送時間枠、CM時間枠、EPG(電子番組ガイド)などで構成される、放送運行データのベースになるもの。通常、データはそれほど大きくないが、たとえばスポーツ中継がある場合などは、試合延長に即時対応できるよう、起こり得る予備の編成を何十パターンも作成するためデータが肥大するという。「特に大型連休や年末年始などは、その間のデータを事前に用意する必要があるため、データ量が膨大になります。しかし、番組編成データがなければ、系列局の放送は成立しない。そこで従来は送信完了まで系列局担当者を待機させ、エラーが出た場合は、データをメール添付で各局へ送るなどの対応をとっていました」と同技術局 設備センターの遠藤 修二氏は述べる。
ほかにも課題はあった。
従来は、同じくEAIツールの性能面の制約から、連携先別に3台、時間指定起動を行うスケジューラ用に1台の計4台の物理サーバー構成で運用。その運用負荷と保守費用が現場の負担になっていたのである。「さらに、当時の環境では連携先の追加・変更などをスクラッチ開発で行っていたため、作業が発生するたびに開発費用がかかっていました。加えて、開発を担当した人物しかシステムを扱えず、改修作業が属人的になってしまうことも不便な点でした」と浅見氏は続ける。特に海外製品は、リリースから時間が経つと技術者の不足や運用費の面で問題が大きくなる傾向も考慮し、同社はEAIツールの入れ替えを決断。サーバー集約も視野に入れた、システムインフラ全体の見直しを開始した。