月別アーカイブ: 2015年2月

新年快乐!ASTERIA Cloud Conference 2015

新年快乐!(中国語で新年を祝う挨拶)

中華圏では、今日から春節。いわゆる旧暦でのお正月にあたります。新暦上の新年は毎年変わりますが、今年は2月19日。その大晦日にあたる2月18日にインフォテリアが開催したプライベートカンファレンスが「ASTERIA Cloud Conference 2015」です。

ASTERIA WARPが最初にクラウド上で稼働するようになったのは、5年前の2010年に出荷開始したASTERIA WARP「4.5」というバージョン。それから5年を経て、来る3月に最新バージョン「4.9」を出荷します。「ASTERIA Cloud Conference 2015」は、この「4.9」の出荷を記念し、ASTERIA WARPのそもそもの製品コンセプトや、現在のアドバンテージ、これから考える未来を伝えるカンファレンスでした。

まず基調講演では、私がクラウド化の先にある21世紀型の企業IT、組織そして社会の革命的変化についてお話をしました。続くゲストのAmazon Data Services Japanマーケティング本部長の小島英輝氏の話は「イノベーション」、Amazon Web Serviceの歴史をひもとき、現在の実績や、将来像までお話しいただきました。

そして、私はその場で小島さんに、先頃発表され話題となっている「Amazon Aurora」へのASTERIAでの対応をコミット。逆に、私たちが日本でのリリースを首を長くして待っている「AWS Marketplace」の提供時期について小島さんに質問すると、小島さんから「日本でも近々にリリースする」とのコミットいただきました(笑)

ASTERIAの最新バージョン「4.9」の説明を行ったのは、ASTERIAシニアプロダクトマネージャーの森一弥。このバージョンのテーマが、「共存〜共に在在し、力を合わせて栄える〜」であり、クラウドと既存システム、現場部門とIT部門、ベンダーとユーザーなど様々な「共存」を実現するためのデータ連携としてパワーアップしたことをサイボウズ kintoneやAmazon Redshiftとの連携デモを交えて説明しました。

さらに、サイボウズ社との協力で完成したASTERIA WARPのkintoneアダプターに関して、第2子誕生でイクメン中のサイボウズ青野社長からもビデオメッセージをいただきました。

迫力があったのは、サイバーエージェントの中澤洋雄さんの事例講演。kintoneのアプリケーションとASTERIAのデータ連携で、「完全自動化への挑戦」という話です。曰く、「処理時間2、3割改善などというのではダメ、処理時間ゼロを目指している。」と。目標を極めて高く掲げることで、ブレークスルーが生まれるという背景に触れました。

そして、Publickeyの新野淳一編集長がモデレータを務めるパネルディスカッションでは、クラウドとデータ連携の関係に迫りました。

「ぶっちゃけ、クラウド時代にデータ連携が必要なの?」という素朴な疑問に、Amazonの小島英輝さん、サイボウズのkintoneプロダクトマネージャーの伊佐政隆さん、そしてインフォテリアの営業本部長代理の熊谷晋が切り込み、データ連携ソフトウェアの価値を明らかにしました。

雨にもかかわらず、満員御礼の会場。通常の会議場やホテルでの開催とは違い、360度スクリーンの丸い会場の中は熱気に包まれていました。ご来場いただいた皆様に深く感謝いたします。

インフォテリアは、「つなぐエキスパート」として、これからもクラウド連携をはじめ様々な「つなぐ」の先頭を走っていきます。

Egisonに見る「イノベーション」の「べき」と「たい」

2月3日(火)に開催された日本情報処理学会主催のSOFTWARE JAPAN 2015の招待講演として「日本のソフトウェアはもう世界に羽ばたくチャンスはないのか?」と題して話をしました。イベント全体のテーマは、「日本から破壊的イノベーションを起こすには?」ということでしたので、大まかに以下のような内容で話を構成しました。

・ソフトウェアの輸出入格差、日本の市場シェア
・ソフトウェア企業米国輸出/撤退の数々
・米国と日本の違い:技術以上に経営とマーケティング
・破壊的イノベーションを阻害する3つの罠+最大の罠

その中でも特に私が強調したのは、イノベーションを阻害する最大の罠である「『べき』の罠」です。

このようなイベントで「イノベーション」が話題になるときに、よく聴くのが、「イノベーションを起こすにはどうすべきか/どうあるべきか」という言説です。しかし、私にはこのような大人数での討議や活動の「べき」論からイノベーションが起こる気が全くしません。「べき」で語られることは、全て誰かがやっていること、言っていることです。一方で、イノベーションは、その定義により「斬新なこと」ですから、そもそも「べき」とイノベーションは対局にあるのです。

私は、イノベーションを生み出す源泉は「べき」ではなく「たい」であると確信しています。そして、なんと同じSOFTWARE JAPAN 2015で、まさにその実例に遭遇したのです。

その実例とは、本編の一連の講演ではなく、「ソフトウェアジャパンアワード」を受賞した新プログラミング言語「Egison」。「Egison」は、その作者の江木(Egi)聡志さんが東京大学在学時に、「より人間の直感に近い表現でコンピュータを使いたい」という思いから生まれた新しいプログラミング言語です。具体的には、コンピュータ処理の中でも重要な要素の一つであるパターンマッチングを簡潔かつ直感的に記述できます。


江木聡志氏ソフトウェアジャパンアワード受賞スピーチ資料より

江木さん本人の受賞スピーチでその説明を聴いて、この言語が、まさに江木さんの「たい」を実現するために作られたことと、この言語がプログラミング言語の歴史の中でも破壊的なパワーを持つ可能性を秘めていることを感じ、身震いがしました。

Egison」は、まだほんの一部でしか使われていませんが、「Ruby」に続いて日本発で世界で使われる可能性を秘めています。まさしく、大人数でイノベーションを討議するよりも、一個人の「たい」が実際にイノベーションを起こしていく好例です。プログラミング言語に興味のある方は、ぜひ「Egison」に触れてみてください。

《関連リンク》
Egison受賞プレゼン(Slideshare)
Egisonウェブサイト