月別アーカイブ: 2014年6月

社外取締役は必要なのか?

いま経済界では「社外取締役」の義務化が取り沙汰されていますが、先週、インフォテリアの定時株主総会では、社外取締役が2名選任されました。取締役会は「会社の重要な意思決定と業務執行の監督を行う」役目を負っています。そのメンバーのなかでも社外取締役は、社内のしがらみや利害関係に縛られず役目を適切に果たし企業ガバナンスの強化を行う事を期待されています。

日本の企業は、取締役を出世の階段として扱うために取締役の職務が単に「偉い人」であることも少なくなかったのですが、最近では取締役本来の役割が少しずつ重視されてきているようです。その結果、社外取締役の設置の義務化が議論されていますが、これに反対している企業・団体も少なくありません。

一方、インフォテリアでは、創業時から一貫して社外取締役を置いています。これは、上記の社外取締役の役目、効果に加えて、ベンチャー企業である当社が、新たにチャレンジ(リスクテイク)していく領域に対して経験・知見を持った方に、経営判断・監督に参加していただくためです。

この考えから、インフォテリアでは創業からこれまで、以下のような視点で社外取締役を選んでいます。

<創業期のチャレンジ>
企業としての基礎体力をつけること
→財務・ソフトウェア企業経営に経験・知見のある方
(村口和孝氏、菊池三郎氏)

<上場前後のチャレンジ>
国内における自社製品による確固たる事業基盤を作ること
→国内の情報サービス事業、ネット事業にに経験・知見のある方
(浜田正博氏、千田峰雄氏、樋口理氏)

<現在のチャレンジ>
新市場への投資・展開を成功させること
→海外市場での事業や投資に経験・知見のある方
(宋文洲氏、磯崎哲也氏)

そして今回は、日本を代表する製造業においてEurope統括子会社CEOやAsia Pacific統括子会社社長を歴任された齋藤周三氏と、現在シリコンバレーのベンチャーキャピタルのCEO、Anis Uzzaman氏を推薦し、選任されました。

このように、インフォテリアでは社外取締役に大きな意義を見いだし、創業来一貫して社外取締役を置いています。また、知見・経験に加えて重視していることは、取締役会で活発に発言してくださる方ということです。そうでなければ、社外取締役が形式化してしまうからです。実際、インフォテリアの取締役会は創業時から社外取締役の方が活発に発言いただいてますし、社外取締役からの議案提出や社外取締役の意見で否決される議案もあります。

社外取締役の導入に反対する意見の中に、「外部を入れると意思決定が遅くなる」という意見がありますが、社外取締役が過半数を占める米国の企業の方が意思決定が速いのは多くの人が認めるところと思います。また、「何もわからない人に判断に関わって欲しくない」という意見もありますが、インフォテリアの経験では、社外取締役の方が発せられる的を射ないような質問ですら、社外から見るとそう考えるのかという社内では気がつかない気づきとなり、より熟考することにもつながります。

社外取締役を「義務化」するとなると、形式化してしまいかねないので、私自身は企業の判断で良いとの考えですが、社外取締役には単にガバナンスを強めるだけでない、経営的なメリットもあるということを強調しておきたいのです。

VCファンドへの個人投資規制にパブリックコメント

あなたは、パブリックコメントをしたことありますか?

現在、政府では、様々な政策や法令改正にあたり、「パブリックコメント」という一般からの意見を聴く仕組みを導入しています。これは1994年に施行された行政手続法によって制度化されたもので、現在日本では特定の法令以外については必ずこの手続きを踏むことになっています。

私は、先日金融庁からパブリックコメントに付された、「適格機関投資家等特例業務の見直しに係る政令・内閣府令案」に対して異議があり、本日パブリックコメントとして意見を提出しました。この案は、悪意のあるベンチャーキャピタル(VC)ファンドによる不適切な出資勧誘による被害を防止するための法令の改正案であって、目的には賛同します。しかし、その中身が問題なのです。

改正案では、VCファンドに出資できる個人は、以下のいずれかに該当する人に限定されます。

(1) ファンドの運用者、ファンドの運用者の役員および使用人
(2) 投資性金融資産を1億円以上保有かつ証券口座開設後1年経過した個人

これでは、かつてインフォテリアのエンジェルになっていただいた方々や、インフォテリアのリードVCであった日本テクノロジーベンチャーパートナーズの出資者には多くのVCファンドへの出資不適格者が出てしまいます。

もちろん、インフォテリアは、これからVCから出資を受けることはないので、直接の影響はありません。しかし、この改正は日本の新規起業(スタートアップ)およびその資金調達を阻害しかねないと大いに懸念するのです。現在、日本では、スタートアップが増加傾向にありますが、創業期ベンチャーの投資は独立系VCがリードしているのが現状で、その独立系VCは特定の大きな財源を持たないので個人投資家からの出資も少なくありません。

このような中で、多くの個人投資家を閉め出してしまうことは、政府が成長戦略「第3の矢」で示している新規開業・起業の促進に反する結果となってしまいかねないわけです。このようなことから、私はパブリックコメントとして、改正案に対する問題点と提案を記載して提出しました。(詳細な内容はドキュメントイメージをクリック)

さて、このような話をすると、「パブリックコメントなんて形式だけで何か言っても意味が無い」と言われることがあります。

しかし、私は4年前に、未公開ベンチャー企業への個人の投資を大幅に規制する案が出たときにもパブリックコメントをしましたが、結果としてパブリックコメントに付された案からいくつもの点が変更されました。もちろん、私の意見は多くの意見が出された中のたった一つではありますが、意見をすることで変える事ができたのです。

「直接言っても変わらない」と聞こえないところで批判したり、評論したりするのではなく、直接意見を言い、行動しましょう。そうしなければ変わりません。これは、パブリックコメントだけではなく、仕事においても、プライベートにおいてもあてはまるのではないでしょうか。