月別アーカイブ: 2014年5月

「アナと雪の女王」と企業向けソフトウェアの未来

わかってはいましたが、プロの仕事を見ると唸ります。

先日、話題の「アナと雪の女王」を観ました。評判通り、心に刺さるとても良い作品でした。しかし、唸ったのは帰宅してからです。映画館でみたのは日本語への「吹き替え版」ですが、映画を観終わって買って帰ったサウンドトラックCDは、日本語版と英語版の両方が入っているものでした。この映画は多分にミュージカル構成になっていて、ストーリーが歌で展開する部分も多く、歌だけでもだいたいのストーリーをイメージできます。

そこで、オリジナルの英語版にも触れてみようと、英語版の曲を聴いたところ、日本語版の歌詞が翻訳ではなく、また意訳も超えた、あえて言えば「超訳」とも言えるものだとわかり、そのプロの仕事に唸ったのです。例えば、「Let It Go」日本語版の「ありのままに」の出だしはこうです。

 降り始めた雪は 足跡消して
 真っ白な世界に ひとりのわたし
 風が心にささやくの
 このままじゃ ダメなんだと

同じ部分の、英語版の歌詞はこうです。

 The snow glows white on the mountain tonight,
 not a footprint to be seen.
 A kingdom of isolation and it looks like I’m the queen.
 The wind is howling like this swirling storm inside.

日本語版には、山(mountain)も、王国(kingdom)も、女王(queen)もありません。しかし、それでいてこれが映像を伴うとその雰囲気も感情も十分に伝わります。いや、十分にどころか翻訳を遥かに超えて。念のために、CD添付の歌詞カード(=翻訳)だと、同じ部分はこうです。最初の日本語歌詞と比べてみてください。

 今夜の山は 雪が白く輝いて
 足跡ひとつ見えない
 まるで孤独の王国 私はその女王って感じ
 心の中で渦巻く嵐のように 風が唸ってる

この翻訳があれば、できるだけ翻訳を活かしたい、オリジナルに忠実でありたいと思いますよね。しかし、どちらが心に刺さって来るかというと明白です。オリジナルがあったとしても、クリエイティビティを発揮して、アートの領域に高めるプロの仕事に唸るのです。

映画の領域で仕事をされている方々にとってみれば、こういうことは当たり前のことかもしれません。「何を今更!」と。しかし、私たちが仕事をしている企業向けソフトウェア領域からすると、かなりの違いがあります。

企業向けソフトウェアにおいても、従来の機能一辺倒のソフトウェア開発から、最近はUX(ユーザーエクスピリエンス)に注目が集まり、またゲームの要素を取り入れるゲーミフィケーションなども進んでいますが、このような人の感性まで揺さぶるレベルではありません。しかし、こういったアートと呼べる領域の仕事は、ソフトウェアには関係ないでしょうか?

これらの領域は、クリエイターやアーティストの仕事領域であることは明らかです。しかし、これからは企業向けソフトウェアであっても、個人が持ち運ぶデバイスで、個人が使い易いもの、個人の生産性が上がるものがより重視されるようになります。そのような環境においては、私は機能だけでなく感性による評価も大きな部分を占めるようになると感じるのです。

ですから、ソフトウェア制作においても、オリジナルを作る開発メンバーはもちろんのこと、ローカライズのメンバー、そしてマーケティングや営業のメンバーでさえも、そのアウトプットを妥協のないアート領域に高める仕事が出来るチームがこれから先のソフトウェアをリードしていくのではないでしょうか。特に、世界を目指すのであれば、翻訳ではなく、要望を取り込むだけでもなく、それぞれの言葉や文化の壁を溶かして個々の人たちに心に刺さるソフトウェアを提供していきたいと感じ、そのためにどういった取り組みができるかに想いを馳せるのです。

ASTERIAで残業削減!?

先週、ASTERIAのパートナーミーティングを行いました。毎年5月に年度のキックオフと情報共有を兼ねたパートナーミーティングを実施していますが、今年は目黒雅叙園にて。

決算発表前だったので、当日はASTERIAの好調も第3四半期までの数字でしか説明できませんでしたが、本日発表した通期決算(※)でも改めて開示しています通り、おかげさまでASTERIAは2013年度も大きく伸張しました。導入社数は4,000社を超え、市場シェアは7年連続No.1、そして、以前に導入された外資系EAI製品のリプレースも目立ちました。

このように良い成績を残すことができたのも、インフォテリア製品を使っていただいているユーザー企業の皆様、またユーザー企業を直接ご支援いただいているパートナーの皆様のおかげです。あらためて深く感謝申し上げます。

ASTERIAパートナーミーティングでは、毎年数々のアワードを授与させていただいていますが、2013年度で最も売上の多かったパートナーのアワード「Partner of the Year 2013」は、SCSK株式会社 様が受賞されました。

受賞のコメントでSCSK様から最近NHK「ホワイト企業」についての取材を受けて、5月4日に放送されたというお話があり、その中でもASTERIA担当部門は残業を削減し、業績も好調とのこと。

そこで、SCSK様のテーブルでさらにお話をうかがうと「ASTERIAを使ったシステム構築はトラブルが少ないので、担当部署の残業がとても少ない」とおっしゃるのです。確かに、システム開発においては、開発中のトラブル、見積もりの甘さなどで、デスマーチ化して残業が増えブラック部門化する話は少なくありません。そんな中で、ASTERIAの品質が良いのでトラブルがほとんど無く、残業が減り、パートナーの担当の皆様もハッピーだという話を聞いてとても嬉しくなりました。

ASTERIAでは「工数削減」を2002年の出荷開始時からアピールして来ましたが、トラブルが減り、残業が減り、結果として関わってくださっている方々の生活にも笑顔をもたらしているのだとしたら、私たちも望外の幸せです。

※注
決算の詳細に興味のある方は、5月15日に配信したネットライブ決算説明会の録画を公開しています。

2014年3月期業績見込みを開示しました

昨日、2014年3月期の業績見込みを開示(PDF)しました。

インフォテリアは、前期より業績予想を開示していませんが、東証からの要請により、業績が前年度と一定程度以上の差異が出る見込みが明らかになった場合は、業績予想の修正と同じように見込み値を速やかに開示することとなっています。

2014年3月期の決算発表は明後日5月15日(木)を予定していますが、昨日の段階で前期に比べて大きく上触れすることが明らかになったため、その概要を開示したものです。具体的には、以下の通り、創業来最高の売上高、前期比2倍強の当期純利益となる見込みです。

(連結) 見込み 前年比
売上高 1,487百万円 11.8%増
営業利益 206百万円 168.6%増
経常利益 187百万円 112.0%増
当期純利益 70百万円 102.3%増
一株あたり当期純利益 6.50円 +3.32円

好決算の主な理由は、主力製品の「ASTERIA」と「Handbook」の好調です。決算の詳細に興味のある方は、5月15日(木)17:30から約1時間の予定で配信するネットライブ決算説明会にぜひご参加ください。ご質問にも私自身がライブで答えさせていただきます。

「ライツ・オファリング」の結果について

去る4月25日、インフォテリアが実施した新型増資「ライツ・オファリング」が終了いたしました。結果としては、4月30日に開示させていただいた通り、総額で約8億5百万円の増資が完了いたしました。また、この調達金額に従って、当初開示した事業計画をどのように調整を行うかについて、5月9日に開示させていただきました。

今回の調達金額は当初の目論見には達しなかったものの、当社が計画している海外展開への先行投資に向けて十分に意義のある金額であり、増資に応じていただきました方々に深く御礼申し上げます。

すでに開示資料でもご説明しております通り、今回の調達を原資として、当社としては海外展開を加速してまいります。具体的には、下記の通り、既に展開を始めている米国、中国、香港での事業の加速に加えて、東南アジア領域への展開も進めてまいります。

(1) 米国連結子会社に係る事業資金 3億円(2014年7月~2016年6月)
(2) 中国連結子会社に係る事業資金 1億円(2014年4月~2016年3月)
(3) 香港連結子会社に係る事業資金 3億円(2014年10月~2016年9月)
(4) 新設予定の東南アジア子会社に係る投資資金 4億円(2014年6月~2016年5月)

合計金額としては、次年度(2015年4月〜)以降の投資計画には多少不足が生じますが、不足額の調達手段については、当社株価の状況を鑑み、当社株式の希薄化が生じない方法を優先的に検討することとし、2015年1~3月時点の国内市場および海外市場の動向によっては、国内投資等に使用する予定であった手許資金を海外への事業展開に使用することも検討してまいります。

いずれにしても、株主の皆様にご支持いただいた今回の増資資金を、当社の創業からのビジョンである、世界に通用するソフトウェアを開発し、世界市場で提供するということの実現のために有効に活用してまいります。結果として、当社の業績向上を加速し、株価への好影響を及ぼし、株主の皆様へも少しでも多くの還元をできるよう尽力してまいります。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

英語でのスピーチと5つのポイント

久しぶりに全て英語でスピーチを行いました。英語でのプレゼンは時々あるのですが、大勢の聴衆の前での英語でのスピーチは何年ぶりでしょうか?

場所は、シンガポール。Marina Bay Sandsで開催されたウイングアーク1st社のシンガポールオフィス開所セレモニーでの締めのスピーチをMIJSコンソーシアム理事長として行いました。日本企業のセレモニーですが、シンガポール政府関係者や現地企業の方々も大勢いらっしゃっることに当日気がついたので、日本語で行うつもりだったスピーチを急遽英語に変えて。

いま、インフォテリアは海外展開に力を入れていますし、MIJSコンソーシアム理事長の仕事としても、英語のプレゼンだけでなく、英語のスピーチが増えることと思います。英語でのスピーチは、決して上手い方ではありませんが、気をつけているいくつかのポイントがあります。

その1:原稿を持たない

原稿を書いても、手元には持ちません。持つとどうしても読みたくなってしまいます。もし持つとしてもトピック一覧程度しか持たず、目線は会場に向け、語りかけること。私は、プレゼンと同じく何人かの凝視ポイントを決めてローテーションして行きます。

その2:エピソードを入れる

国内では、誰が喋っても良いような社交辞令的な挨拶も多いですが、それではせっかくの英語のスピーチの機会を無にしてしまいます。そこで、具体的なエピソード入れ、聴いていただいている方に興味を持っていただける内容にします。今回は、社長の内野さんが独立したときに食事を共にし、ブログを書いたエピソードを入れました。

その3:ジェスチャーを大げさにする

ただでさえネイティブからほど遠く、通じにくいスピーチです。セレモニーでのスピーチとなると日本ではかしこまって話すのが良いのでしょうが、できるだけ伝わるようにするために、身振り手振りを交えて、感情やイメージなどが少しでも多く伝わるようにします。

その4:リハーサルをする

私が教えているプレゼンの鉄則の基本と同じですが、原稿を読まずに話の流れを覚えるためにもリハーサルをします。間違えやすいところも分かり、つなぎを練習することで、よりスムーズにスピーチすることができます。今回は当日に英語にしたので、こっそり会場裏の廊下に抜け出して3、4回リハーサルをしました。

その5:直前に英語の歌を歌う

登壇の前の緊張をほぐすために、自分の歌い慣れた英語の歌を歌います。緊張をほぐすだけでなく舌を英語に慣らすこともできて一石二鳥です。今回は、英語プレゼンの前によく歌う「Fantasy」で舌慣らしをしました。この時のために、たまにはカラオケで英語曲を歌っておくのも良いですね。

これから、インフォテリアは海外での活動が増えるので、私自身英語スピーチの機会も増えると思いますが、このブログの読者の皆さんも、英語でスピーチする機会が増える人も少なくないはずです。この5つのポイントが少しでもハードルを下げるヒントになれば幸いです。

そして、私は6番目のポイントに挑戦したいと思います。それは、「最初にジョークを入れる」ということ。私にとって、日本語でさえ最初のつかみはまだ難しいのに、英語でのジョークはさらにハードルが高いものです。しかし、世界中のインフォテリア社員が一同に会した前でスピーチをする場面をイメージしながら、さらに研鑽していきます。