月別アーカイブ: 2015年3月

日本のエンジニアスタートアップの環境は酷いのか?

元ソフトウェアエンジニアとして、また資金調達をしてスタートアップした一人として、大変気になるブログ投稿がありました。

【とあるスタートアップを抜け、CTOを辞めた話。

内容はまさにタイトルの通りなのですが、私が気になったのはそのなかの「日本のエンジニアスタートアップの環境の酷さ」という節。その中に、こういう記述があります。

「日本の、VCや投資家が技術が全く分かってないのだ」
「投資する側が、技術理解せずに、その先にあるマーケット、ビジネス、社会システムを想像できず、そして、それにリスクを負うことができない」

筆者の気持ちが分からなくはないですが、「全く」や「できない」ということはありません。インフォテリアも「XML」という当時は極めてニッチな技術でしかも、その専業でスタートしたにもかかわらず、理解をしていただいた投資家はいました。その後、15年以上の間、国内外のVCや投資家と付き合ってきましたが、国内で技術が分かっている人は少数ですが全くいないわけではありません。一方でシリコンバレーなどは技術がわかっている人は確かに多くいます。

では、なぜ「少ない」のか?これはエンジニア側にも問題があります。それは、

  1. 日本では、エンジニアスタートアップの数が極めて少なく、技術がわかるVCや投資家のニーズが少ない。
  2. 筆者が挙げているシリコンバレーにおいては、技術がわかる投資家の多くはエンジニアの経験がある。

つまり、国内ではエンジニアがエンジニアの枠内に留まったままずっと雇われエンジニアであるために、外に出てスタートアップするケースが少ない事、エンジニアの枠から外に出て経験を活かした別の仕事につく人が少ない事、に筆者が嘆く事象は起因しているのです。

「環境」について補足しておきましょう。国内の資金調達の環境ということから言えば、インフォテリアが創業した1998年よりも圧倒的にスタートアップ投資への理解も実行も進んでいます。一方で、ブログではシリコンバレーのY-Combinatorの存在が挙げられていますが、彼らが、何ミリオンUSドルというような大きな投資をするのではなく、ある意味VCへのフィルタリングのような存在です。また、Y-Combinatorを卒業してもVCのオファーを受けられない企業もたくさんあります。

インフォテリアもY-Combinator企業に複数投資していますし、社外取締役には、シリコンバレーのVCの現役CEO(Anis Uzzaman:彼も元エンジニア)がいるので、目の前の話として知っています。とかく、シリコンバレーは憧れ先行になりがちですが、日本に届いている記事や噂だけで判断しないよう注意が必要です。

いずれにしても、エンジニアがエンジニア外の事を嘆いているだけでは何も変わらず、エンジニアこそこういう状況を変えられるのです。

「日本のエンジニアよ、もっともっと外に出よう!」

これが私の言いたいことです。「外」は、いまの会社の「外」、エンジニア「外」の仕事、もちろん国の「外」だってかまいません。とにかく、エンジニアスタートアップは少な過ぎるし、エンジニアを活かして他の仕事をやろうという人も少な過ぎる。「マネジメントは格好悪い」だとか「お金のことを考えるのは格好悪い」だとか、エンジニア原理主義のようなものを聞く事があります。しかし、仕事である以上、役に立ってナンボ。お金は価値創出のバロメーターです。私は、元ソフトウェアエンジニアだったことを今でも大変誇りに思っていますし、だからこそ出来た事がいくつもあります。

ソフトウェア業界にいると、そして元エンジニアという立場にいると、エンジニアの嘆きを聴くことが本当に多いのですが、腕に自信があるなら、自信があるからこそ、外に出てみましょう!そこに新しい人生を創ることも、社会の変化への貢献もできるはずです。

生きているうちに「イスカンダル」に行くことになるとは!!

「イスカンダル」と言えば、「宇宙戦艦ヤマト」!私と同世代でなくてもそうでしょう。

「宇宙戦艦ヤマト」に出て来る「イスカンダル」は、地球から14万8千光年離れた大マゼラン星雲サンザー太陽系の第8番惑星です。地球と同じように生命体があり、宇宙戦艦ヤマトは、その星にあるというコスモクリーナーを求めて「♪銀河を離れ イスカンダルへ はるばるのぞむ〜」のでありました。

つまり私にとって、そして多分多くの日本人にとって「イスカンダル」とは、スクリーンの中の存在、自ら行ける場所ではない存在であったわけです。

しかし!正に今、私は「イスカンダル」に向う道中にいるのです。

しかも!宇宙戦艦ヤマトがワープを駆使しながら急いでさえ1年かかったという道中を、なんとこれから1時間で行くというのです。いくらインフォテリアが「ASTERIA WARP」を持っているからと言ってもリアルなワープは不可能です(笑)

と、書いている間に「イスカンダル」に着いてしまいました(笑)

シンガポールからバスで1時間弱。そう、ここはマレーシアの「イスカンダル」という場所(写真)です。「イスカンダル」は、マレーシア政府の肝いりで開発されている人工的な大都市です。2つの橋でシンガポールと陸続きになっています。この2つの橋から広がるように建設されていることからもわかる通り、土地の少ないシンガポールのエクステンション(拡張)という位置づけで開発されています。

地図でもわかる通り、「イスカンダル」は、シンガポールの国土(地図の下部の島全体)より広く、国境を挟んだ新たな経済圏となるべく積極的に開発されている場所です。既に、食品産業、ヘルスケア産業、教育機関などが誘致され動き始めています。残念ながら、イスカンダル地区開発局(IRDA)のプレゼンテーションの中には、日本企業は1つもありませんでした。(日本の商社がからんでいるプロジェクトはいくつもあるらしいのですが、個別に認識されるほどではないということです。)

今年は、アジア版EUと言われる「AEC」(ASEAN Economic Community)がスタートする年です。ASEANを構成する10ヶ国の域ないで「ヒト・モノ・カネ」がさらに自由化され1つの経済圏が生まれます。それに先行して、「イスカンダル」のように国境を挟んだ経済は既に東南アジアのあちこちで始まっています。例えば、ミャンマー南部⇔タイ中部⇔ラオス南部⇔ベトナム中部を結ぶ「東西経済回廊(East-West Economic Corridor)」や、バンコク⇔アランヤプラテート⇔プノンペン⇔ホーチミンを結ぶ「南部経済回廊(South Economic Corridor)」も発達してきています。日本は、海に囲まれているため、このような国を超えた躍動を感じることはありませんが、国が陸続きであることの違いとポテンシャルを改めて感じます。

「宇宙戦艦ヤマト」では、「イスカンダル」は悲しい最期を迎えますが、こちらの「イスカンダル」はASEANの成長やAECの発展に支えられ、新しい東南アジア経済圏をリードする存在になっていくことを期待して、地球の「イスカンダル」に足を踏み入れました。