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世界を駆ける筆に込めた「念い」

 貴重な経験でした。

先週末に、シンガポールでの日曜恒例の早朝ランの後、書家の前田鎌利さんの揮毫(きごう)のサポートをさせてもらったのです。

前田鎌利さんは「日本の文化を未来へ継ぐ」の理念のもとに、国内での活動だけではなく、海外でも書を中心とした日本文化発信の活動を行われています。

これまでにも、米国、台湾、スイス、フランス、ベルギー、イタリアなど数々の国を訪ねて揮毫をされてきましたが、今回、いよいよ初のシンガポールでの揮毫です。

シンガポールでの揮毫の場所に選ばれたのは、以下のような象徴的な場所でした。

・Merlion Park(マーライオン公園)
・Gardens by the Bay(ガーデンズバイザベイ)
・Sri Mariamman Temple(ヒンズーの寺院)
・Masjid Sultan(イスラムの寺院)
・Hillman Restaurant(ペーパーチキンの店)
・Fullerton Hotel(元海軍省、元郵便局のホテル)
・National Museum(国立博物館)
・Lao Pa Sat(ホーカー:屋台村)

その場所に立ち、周辺を見て歩き、音を聴き、気を感じて、揮毫が行われます。観光地では周りに人だかりができます。個性ある、時には力強く、時には優しく、そして時には目を見張る書が捻り出される瞬間に触れて、鳥肌が立つ思いがしました。

 

例えば、Sri Mariamman Templeでの、この揮毫。「神神神・・・・」寺院の門のイメージの書となっています。

 

例えば、Lao Pa Satでの、この揮毫。「交差点」。シンガポールの今と昔の交じり合う場所のイメージの書となっています。

そして最後に、インフォテリアのシンガポールオフィスでも揮毫。私の経営の師匠だった堀場雅夫さんの志を受け継いで、現在の中期経営計画のスローガンとしている「おもしろ おかしく」を選びました。出来上がった書は、写真のとおり。人によって感じ方は違うでしょうが、私は肩を張らず時代に合ったしなやかさ、スマートな趣きを感じました。

私は常々「外に出よ」という意識を持っていますし、そうアドバイスをします。それは、枠の中には無い、組織の中には無い、日本の中には無い、視点や刺激を得ることができるからです。しかし、今回の前田さんの揮毫をサポートしながら、外に出るからには、視点や刺激を「得る」だけでなく、自らも新たな視点や刺激を「与える」存在でありたいものだと、改めて唸りました。

世界へ羽ばたけ!日本のスタートアップ

昨日、東京国際フォー-ラムで「Startup World Cup 2018」の日本代表を決める日本予選の決勝戦が開催されました。これは、世界中のスタートアップ企業がワールドチャンピオン(世界No.1)を目指して行う唯一の世界規模のコンペティションです。今回は前回の倍の規模となる世界32ヶ所(30ヶ国)もの地域で予選が行われますが、その1つが日本。日本では70社以上の応募の中から、10社が決勝にノミネートされました。そして、私はその審査員長を務めました。

決勝ピッチコンテストに残った日本代表候補は以下の10社ですが、あなたが知っている企業はあるでしょうか?

・セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ(洗濯物折り畳みロボット)
・カラフル・ボード(感性を個別に解析するパーソナルAI)
・THEO:お金のデザイン(ロボアドバイザー資産運用)
・Empath:スマートメディカル(音声による気分解析技術)
・ユニロボット(次世代型ソーシャルロボット)
・FOLIO(テーマを選んで投資ができるオンライン証券)
・ディライテッド(オフィス受付システム)
・エイシング(機械制御向けAI)
・メビオール(安全で高栄養価の農産物を生産するフィルム)
・リアルワールドゲームス(位置情報ゲームプラットフォーム)

各社毎に行う、30秒の紹介ビデオ、3分30秒の英語でのプレゼン、1分30秒の質疑応答で全てが決まります。7倍超の倍率の中から選ばれただけあって、どのスタートアップも大変レベルの高い決勝戦となりました。その審査を行ったのは、私以外に以下の7名です。

・一橋大学イノベーション研究センター 特任教授 米倉誠一郎 氏
・株式会社セガゲームス 代表取締役社長 COO 松原健二 氏
・経済産業省 新規事業調整官 石井芳明 氏
・株式会社gumi 代表取締役社長 國光宏尚 氏
・株式会社サムライインキュベート 代表取締役 榊原健太郎 氏
・デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 事業統括本部長 斎藤祐馬 氏
・Plug and Play Japan Managing Partner – Phillip Seiji Vincent 氏

審査は、審査員による下記の7つの評価軸とTwitterによる人気投票を加味して行われます。

<7つの評価軸>
・事業を始めた経緯・問題意識
・市場規模・ニーズ
・トラクション(ユーザー数や売上の伸び)
・競合優位性
・ビジネスプラン(拡大可能性や収益性が明確か)
・チーム構成やメンバーの経歴
・プレゼンテーションの説得力

各審査員が7つの評価軸に対して持ち点10点、合計70点で評価。集計の結果としては、上位3社がかなりの接戦となりました。そこで、最終的な審査員の協議も侃々諤々。日本代表を決めるのに審査時間ギリギリまでかかりました。

そうして決まった日本代表の発表の前に、スペシャルスポンサーのCAC特別賞が発表されました。CAC特別賞は投資資金として5,000万円の副賞が付く賞で、世界大会には行かないものの、大変価値の高い賞です。

CAC特別賞は…

メビオール株式会社!

以前に研究していた透析膜を応用して、あらゆる場所で安全で高栄養価の農産物の生産を可能にするフィルムを開発・製造する会社です。プレゼンでは実物も披露されました。

会場は興奮冷めやらぬ中、いよいよ日本代表の発表です。

日本代表は…

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社!

世界的にもユニークな洗濯物折り畳みロボット「ランドロイド(/ laundroid)」を開発する会社です。来年5月11日のサンフランシスコで世界決勝大会に臨みます。

前回のStartup World Cupでは、日本のユニファ株式会社がワールドチャンピオンとなりました。今回、優勝したセブンドリームには、ビジネスもプレゼンももっと磨いて、2連覇を目指して欲しいと思います。

こうやって、日本のスタートアップが世界レベルの活躍をし、プレゼンスを示すことで、日本のスタートアップがもっともっと増えて、世界に羽ばたくスタートアップが次々と出てくることを願ってやみません。

 

英国メイ首相来日イベントで登壇

大変光栄なことでした。

去る8月31日に、英国のメイ首相の来日に合わせて都内某所で開催された「Japan UK Business Forum」という200名以上の日英経済関係で活躍されている方々が参加するカンファレンスのパネルディスカッションに登壇しました。(英国当局からの要請で、これまで公開することができませんでした。)

このパネルディスカッションは、安倍首相のスピーチ、メイ首相のスピーチ、両国政府機関の調印の後に、「Innovation through Partnership」というテーマで行われました。もちろん全編英語です。

■登壇者(写真左より)
モデレーター:駐日英国大使館 原子力担当一等書記官 化学博士 Dr. Keith Franklin
日:インフォテリア株式会社 代表取締役社長/CEO 平野 洋一郎 (Pina Hirano)
英:Cavendish Nuclear社 チーフ・エグゼクティブ Mr. Simon Bowen
日:丸紅株式会社 電力・プラントグループCEO 柿木 真澄 氏 (Masumi Kakinoki)
英:Cambridge Consultants社 戦略的イノベーション 責任者 Mr. Arend Jan Van Bochoven

まずは、各メンバーの英国との関わりに関する自己紹介から。私は、これからビジネスソフトウェアでもデザインが重要になると考え「デザインファースト」のソフトウェアを開発する戦略を持っており、以前からデザインに長けたパートナーを世界中で探していたこと。最終的に、4月に買収したThis Place社にたどり着いたことを話しました。また、国を跨がった連携は大企業のものだけではなく、インフォテリアのような小規模の会社でも重要な意味を持つと強調しました。

そして、なぜ英国企業をパートナーに選んだのかと質問されました。私は以下のような主旨の話をしました。

「正直に言うと、最初は英国は眼中になく、主に米国の会社を探していました。しかし、約3年前に英国大使館の紹介で、実際にロンドンとマンチェスターに行って10社以上のスタートアップに会う機会を得ました。そこで感じたのは、英国にもこんなにイノベーティブでクリエイティブなスタートアップがあるのか!ということでした。日本で「イノベーション」というと誰もがシリコンバレーと言いますが、ロンドンもヨーロッパ各国からスタートアップが集まり活気に満ちていました。私たちはデジタルデザインのThis Placeと仕事を始め、その結果としてアウトプットも素晴らしく、企業カルチャーも相性が良かったことから、買収にいたりました。」

会場からの質問で、話題はどうやったら日英企業間でパートナーシップを成功させられるかという話に移ります。

英国と日本は、島国であることや、文化や、環境などが似ていてること、両国の関係の歴史も長いことなどから相互理解しやすく、またそれぞれの国で暮らすなどのことで、さらに良い協業が築けるだろうなどの意見がパネラーから出されました。

それに対して私は、「類似点の議論がありましたが、イノベーションという観点からは、『違う』ことがある点が重要です。同じ環境、同じ考えをもったモノリシックな集団からはイノベーションは起こりにくいでしょう。イノベーションとは『新しい組み合わせ』(注:Joseph Shumpeter)から起こることが少なくありません。異なる考え、異なる地域の人々が協業し刺激しあうことで、イノベーションに寄与するでしょう。」という主旨の意見を述べました。

会場からの次の質問は、「イノベーションを生み出すには、どのようなマネジメントプロセスが必要か?」とういうものでした。

パネラーの一人からは、イノベーションを生み出すためのマネジメントプロセスの考え方についての意見がありましたが、私は「イノベーションは、マネジメントプロセスからは生まれない」と応えました。その理由として、「イノベーションの生まれるのは、マネジメントが必要な前段階のアイディアだったり、『思い』だったりする。そのアイディアが具体化する段階でマネジメントプロセスを考えるのが順番」という意見を述べました。

また、「いまはビザ取得などの問題もあるが、日英間の交流をさらに進めるにはどうしたらよいと思うか?」という質問が出ました。

私は、「ソフトウェア業界においては、交流の前に日英お互いのプレゼンスが低すぎます。ソフトウェア業界ではシリコンバレーばかり見ていて、シリコンバレーに行く人も多いけれども英国のことを気にしている人は少ないのが実状です。だから、まずはお互いプレゼンスを上げないと交流しようという意識にも繋がらない」との話をしました。

このように、会場からの質問も受けながら、予定された45分はあっと言う間に過ぎていきました。

嬉しかったことは、パネルディスカッションが終わった後には日英で活躍されている10人以上の方から名刺交換を求められ、私の拙い英語でも伝わることがあったのだろうと感じたことでした。逆に残念だったことは、私以外の日本からのパネラーの方は、あらかじめ与えられていたテーマに関してはしっかりお話しされていたのに、会場からの質問には一切応えられなかったことです。せっかくの「ディスカッション」なので、用意した意見を披瀝するだけでなくインタラクションが重要だと思います。

実は今、英国に来ています。半年ぶりにこの地を訪れ、This Placeメンバーの熱気、街の活気、学生の元気に触れています。改めてパネルを振り返り、強調したいことが2つあります。それは、(1)国を跨がった協業は決して大企業だけのものではないこと、(2)これからの英国は要注目であることです。

これからさらにクラウド化が進み、非中央集権化が進み、「個」の時代になっていくあたって、小さな専門性の高いチームこそが様々な枠を超えて繋がる価値を生み出していくでしょう。そして、大企業を超えたスピードと価値を生み出していくことができると確信しています。

また、EU離脱をし独自路線を進むことができるようになる英国はより力を付けていくでしょう。既に、2017年上半期では、輸出金額は前年同期比で10%も増加、観光客(インバウンド)も前年に比べて6%増加、ロンドン金融街の雇用は13%も増加というレポートが出ています。英国全体の失業率は統計を始めて以来過去最低となっています。メディアの報道だけで、英国の行く先を心配する前に、自分の足で英国を見て感じてください。英国には、ケンブリッジ大学やオックスフォード大学をはじめ世界有数の教育レベルを誇り世界中から若者が集まっています。英国には、新たなイノベーションを生み出す若い力と活力が溢れていると感じるのです。

べき?たい?働き方改革を考える

明日、「働き方改革」を加速させた、電通事件の初公判とのこと。

この事件をきっかけに、残業問題に火がつき、全国的に働く時間を減らそうという
「働き方改革」が広く謳われ始めました。

それに伴って、政府でも様々な動きがあります。残業時間の罰則付き制限、
プレミアムフライデー(関連インタビュー)、祝日のさらなる追加 etc.

しかし、違和感を感じるものも多くないですか?

それは、仕事時間つまり「量」の施策ばかりで、
仕事の内容つまり「質」の施策ではないからだと、私は考えます。

働く時間を減らせば、働く人が皆幸せだと考えるのは、
あまりに短絡的ではないでしょうか?
あなたはどうですか?
内容や効率は横に置いたままで、
とにかく働く時間は短い方が良いという論調となり、
まるで働くことが「悪」のような扱いです。

しかし、本当に必要な働き方改革は「質」の方でしょう。
つまり、
一律に何かやったり、新たに制限や罰則を増やすのではなく、
個人個人の事情や都合に合わせ、働く時間や場所の柔軟性を上げ、
多様性を促進することだと考えています。

言い方を換えると、働き方改革として「質」を上げるには、
「べき」を増やすのではなく、
「たい」を増やすことです。

なぜなら、「〜べき」は「皆同じ」であり「押し付け」だからです。
それは個々の幸せには結びつきません。
幸せは、誰かに与えられるものではなく、
個々の願いの達成と、それに近づく過程にあるからです。

一方で、「〜たい」は、個々の願いであり、
他との差別化との源泉=価値でもあるからです。

仕事とは、個人が価値を創出・提供する活動であって、
少ない時間で同じ価値を創出・提供するためには、
その質を上げていく必要があることは自明です。
さもなくば、単に創出・提供する価値が減るだけで、
その結果として収入が下がり、幸せとは逆の方向に行ってしまいます。

だから、働き方改革が、働く人の幸せを目指すのであれば、
「量」だけに着目した新たな規制や、一律の制度ではなく、
個々の事情や都合に合わせ、パフォーマンスを最大限に発揮し、
「質」を上げていけるような、働き方の多様性が大切なのです。

それは社員と経営のディレクションを合わせることにもつながります。

働き方改革でいろんな施策・対策が出て来ますが、
「量」ではなく「質」の議論にするために、
「べき」が増えることになるのか?
「たい」が増えることになるのか?
という軸で考えるとよいでしょう。

それこそが働く人の「働く幸せ」と「働く成果」の
両方に繋がると確信するからです。

最近、あなたの仕事は、
「べき」が増えていますか?
「たい」が増えていますか?

<関連ブログ>
「べき」を減らせ。「たい」を増やせ。– (2010/01/07) – 笑門来福

Happy 19th Anniversary に感謝

この9月1日にインフォテリアは、19回目の創立記念日を迎えました(写真)。

今年もまた創業記念日を迎えることができたのは、ユーザーの皆様、取引先の皆様、そしてなによりも社員のメンバーと家族の皆様のおかげです。

深く深く感謝申し上げます。

インフォテリアの創業は1998年9月1日。前年には、山一証券、拓銀が経営破綻し、国内はバブル崩壊後の金融危機の影響で厳しい不況風が吹いていたときです。

当時私は35歳になったばかり。「こんな不景気の時に起業はいかがなものか?」などと時期を考えた方が良いとのアドバイスを何人もの先輩にいただきました。しかし、どん底のときこそ上がっていくしか無いわけですから、そこは問題視しませんでした。

それよりも、これからインターネットを介して人も企業も繋がっていく時代の入り口にいる興奮の方が何倍も私を行動に駆り立てたのです。

しかし、日本の経済環境が厳しいことは現実で、創業してしばらくは「1年後には会社が無いかもしれないが、一緒にやらないか」と社員を勧誘していました。

大きな夢はあったけれども、何も保証することはできなかったのです。

でも、だからこそ私は「融資」ではなく全額「投資」による資金調達を行いました。米国で多くの同僚が独立して投資のみの資金調達によって億円単位の調達を実現して新たなソフトウェア企業を始めていました。それは、銀行と組むのではなく、投資家と組むというモデルです。その調達額は銀行の融資に比べると桁違いに大きく、日本でも米国型の投資モデルを持ち込まないと日本のソフトウェア産業は消えて無くなるという危惧を抱いたのです。「非常識」だの「問題外」だの言われながら、結果的に全額を投資によって27億円の資金調達を行うことができ、いまのインフォテリアの基礎を作ることができました。(詳しくは、月刊「事業構想」10月号に)

日本にはまだ浸透していなかった「先行バリュエーション」で「100%投資のみ」というモデルに投資をしていただいた当初の投資家の皆様の「知見」と「先見性」に支えられました。

1年後は存在しないかもしれない設立間もないベンチャーのソフトウェアをその機能と性能に惚れて買っていただいた当初のお客様の「決断」と「覚悟」に支えられました。

そして、安定した会社でのポジションと収入を捨ててジョインしてくれた当初の社員メンバーの「勇気」と「情熱」に支えられました。

それ以降、数多くのユーザー、取引先、そして社員のメンバーなど全ての人々のおかげで、19周年を迎えることができました。本当にありがとうございます。

来年は、いよいよ20周年。

ここまで継続し、成長して来ることができたことに感慨深いものががあります。しかし、世界に羽ばたいた企業の20周年に比べればまだまだ小粒です。まだまだやりたいことは、沢山あります。

創業の時から目指している、ソフトウェアで世界規模で貢献をできる会社への大きな成長を目指して、来る20周年に向けて挑戦を続けます。

<インフォテリアの19年(抜粋)>

  • 1998:大田区の6畳1間のアパートで創業(9月)
  • 1999:世界初の商用XMLエンジン「iPEX」を出荷(1月)
  • 2000:総額27億円の調達を創業時調達を完了(〜3月)
  • 2001:「Asteria for RosettaNet」を発売(1月)
  • 2002:ノン・プログラミングの「ASTERIA R2」を出荷(6月)
  • 2003:「ASTERIA 3」を発売(10月)
  • 2004:「ASTERIA」の導入社数が100社を突破(6月)
  • 2005:「ASTERIA」の解説本が登場(5月)
  • 2006:「ASTERIA」が市場シェアNo.1を獲得
  • 2007:東証マザーズへ株式上場(6月)
  • 2008:中国浙江大学とソフトウェア開発コンテストを実施(12月)
  • 2009:「Handbook」を発売(3月)
  • 2010:「ASTERIA」の導入社数が1,000社を突破(2月)
  • 2011:米Extentechを買収(6月)
  • 2012:中国杭州と上海とに子会社を設置(3月、11月)
  • 2013:香港に開発子会社を設立(11月)
  • 2014:シンガポール子会社設立(11月)
  • 2015:「ASTERIA」導入5,000社突破「インフォテリアの森」CSR開始(9月)
  • 2016:IoTモバイル開発基盤「Platio」を発表(10月)
  • 2017:英ThisPlaceを買収(4月)

 

「Gravio」、登場!

ブログでのご報告が遅くなりましたが、去る6月21日、ようやくGravioの出荷を開始しました!2013年の製品戦略説明で「Gravity」という開発コード名に触れてから4年、いよいよです。

時間をかけた分、ビジネスや社会のインフラとして必要度の高い領域にユニークなポジショニングでの提供を開始できたと考えています。Gravioは、まだ多くの人がその姿をイメージできないであろう、エッジコンピューティングという新しく大きな市場に向けたミドルウェアです。全てのIoTデバイスをクラウドだけで接続できるわけはなく、IoTデバイスとクラウドの間のエッジミドルウェアは必須となります。また、そのエッジミドルウェアは、単にセンサーデータの橋渡しだけでなく、今後はIoTデバイスの制御とシステムとの連携で大きな役割を果たすのです。

さて、提供を開始したからこそできる裏話をしましょうか。

なぜ、提供開始にここまで時間がかかったのか?

最初に「Gravity」を説明したときには、Handbookが情報のOutputが主なことに対して、当初Gravityは情報のInputを行うソフトウェアとして設計開発しました。つまり、Handbookと対になるようなソフトウェアとして説明しました。しかし、製品の開発を進めるうちに、InputとしてIoTを含め他幅広いデバイスへ対応することで、これまでに無い新たな価値を創りだせることに気がついたのです。そこで、その実現のためにそれまでに書いていた「Gravity」のプログラムコードのほとんどを捨てて書き直しました。さすがに、プログラムコードを捨てたことは、その時点では外部には言えませんが、プログラムコードを捨てることは、インフォテリアではよくあることなのです。本当に良い製品を作るために。

このようなことから、「Gravity」として紹介した後に、プログラムコードを捨ててゼロから書き直すことにしました。これも全て、デバイスの時代のつなぐ主役になること、それを世界中でより多くの人により長く使っていただきたいとの思いからです。結果的に当初想定していたより約2年遅れての登場です。そして、そのファーストバージョンがようやく誕生したのです。

これまでも、「ASTERIA」は15年間(そのうち最近の10年は市場シェアNo.1)、「Handbook」9年間(そのうち最近の5年は市場シェアNo.1)と長い間ユーザーが増え続けています。このように長い間使っていただくソフトウェアにするには、単に目の前のマーケットニーズに応えるのではなく、長期的な技術トレンドの見極めと、そこに対する積極的な投資が必要です。また、一方で違う方向性を確信したときには、過去の投資に未練を持つのではなく、勇気をもって新たな確信に進むことも大事です。

実は、ASTERIAもHandbookも何回もプログラムコーディングを捨てて書き直しています。長続きするソフトウェアには理由があります。それはユーザーニーズの側面からはわからない、プロフェッショナルとしてのアートなのです。

【P.S.】
Gravioはすぐにダウンロードして使うことができますが、Gravioについて、デモも含めて詳しい説明を聴くことができるセミナーを開催します。しかもGravioだけでなく、その周辺についてもその道のエキスパートの方々からの解説まで!お申し込みはこちら↓
https://event.infoteria.com/jp/event/e170809/

鐘を鳴らしてから10年経ちました

2007年6月25日、インフォテリアの東証マザーズ上場を記念したセレモニーで東証の鐘を鳴らした日からちょうど10年が経ちました。

上場から10年、色々なことがありながらも、事業を継続し、ここまで成長してくることができたのも、社員メンバー、ご家族、パートナーの皆様、そしてお客様のおかげです。関与していただいた全ての方に深く感謝いたします。ありがとうございます。

そして、先週土曜日にはインフォテリアの上場企業として10回目の株主総会を無事終えることができました。今回は、史上最高の169名の株主の方にご参加いただき、ライブ中継したインターネットでの視聴は330名を数えました。並行して実施したブロックチェーンによる株主投票の実証実験には289名の方に参加をいただき実験は成功しました。これは、日本経済新聞(電子版)でも取り上げていただきました

そして例年通り、株主総会に引き続き事業戦略説明会を実施しました。約35分間のプレゼンテーションでは、インフォテリアの考え方とこれからの方向性を語らせてもらいました。株主総会は、基本的に過去の報告ですが、事業戦略説明会は未来の話ですので、できるだけ多くの株主の方にこちらの話も是非聴いていただきたいと考えて実施しています。参加出来なかった方は、ぜひ録画をご覧ください。

   

今年は、新たにIoT関連の2製品「Platio」「Gravio」の出荷も開始し、また「デザインファースト」のソフトウェア開発に向けて英国のデジタルデザイン企業のM&Aを行いました。今年度の業績としても、売上高が60%増、営業利益が36%増と大きな成長を目指しています。

次の10年に向けて、今年がギア・チェンジの年となるよう、チャレンジを継続し、大きな成長を目指します。

インフォテリアの株主総会にご参加を

私の大好きな花の一つ、紫陽花が街を彩る季節。
それは株主総会の季節でもあります。

日本の株式会社で一番多い決算月が3月。そのため、日本で一番株主総会が多い月が6月となっています。インフォテリアも3月決算のため、株主総会は6月。今年は6月24日、例年通り土曜日の開催です。

インフォテリアの2017年3月末現在の株主数は、11,252名。このうち何名が株主総会会場にお越しいただけるかは当日までわかりませんが、私としては、できるだけ多くの株主の方々にご参加いただきたいと考えています

そこで、以前から個人の方々が参加しやすい土曜日に開催しています(11,252名の株主のうち9割以上が個人株主)。また、昨年までは、午前中に開催していますが、今年は午後1時30分からの開催としました。これは、株主の方々からの意見の中に、午前開催だと遠方から参加される方が参加しにくいとのご意見をいただいたことを考慮に入れたものです。

株主総会は、インターネットでも生中継します。会場に来ることが出来ない方でも、株主総会の様子をライブで観ることができますので、ぜひご参加ください。また、株主で無い方も視聴することが可能です。これまでは、Ustreamを使った中継を行っていましたが、今年は新しい試みとしてYouTube Liveでの配信を行う予定です。

さらに今年は、模擬的にブロックチェーンを使った株主投票(議決権行使)の実証実験を行っています。これは、ブロックチェーンの特長を活かして、発行企業ですら不正ができず透明性の高い株主総会決議を目指したものです。また、今後、信託銀行がAPIなどで情報を提供するようになれば、そのデータをASTERIAで直結することで、株式事務の大幅なコスト削減と高速化が実現できます。さらに、ブロックチェーンのデータを統計的に分析することも容易になります。この実証実験の結果は、株主総会に続く「事業戦略説明会」の中で公開をする予定です。

このように、インフォテリアでは定型的になりがちな株主総会でも、経営理念の1つである「発想と挑戦」を続けています。今年も、インフォテリアの株主総会にご注目ください。

ダイバーシティを推進する「4つのA」とは?

香港で開催されている「Pride and Prejudice」というフォーラム(英Economist主催)に参加しています。これは、世界3ヶ所(ロンドン、ニューヨーク、香港)で同時開催されるダイバーシティをテーマとした会議です。英国のEconomist主催ということもあって、昨夜のテロの影響を心配しましたが、カンファレンスは予定通りに始まりました。

私は、「View from the Top」という午前のセッションにパネリストとして登壇しました。これは、企業トップとしてダイバーシティ特にLGBTにどう取り組むのかということを議論するセッションです。パネリストは、オーストラリア、タイ、フィリピン、日本から1名ずつ。各国でLGBTに積極的に取り組んでいる企業のトップです。

ダイバーシティへの取り組みは、先進国の中では日本は遅れているほうだと感じていますが、日本の現状を共有し、企業トップに取り組んで欲しいプロセスを「4つのA」に整理して提案しました。その「4つのA」とは以下の通りです。

Aware = LBGTの人達の存在や、その課題を認識すること。
Accept = LGBTの人達を受け入れる意識を組織やメンバーが持つこと。
Action = LGBTの人達が働き易くするためにルールを変えたり勉強会を実施すること。
Appeal = 自社の取り組みを社会に告知し、取り組みを連鎖させていくこと。

また、パネルの中では唯一のIT会社だったので、ITがLGBTの人達が働き易くなる社会作りに貢献できることについても話しました。

SNS (Social Network Service):LGBTの人達が組織や地域を越えて繋がり、連絡を取り合ったり、コミュニティを作ったり、コラボレーションすることができる。

これは、既に実現していますが、少し先の私の夢も語りました。

AI(人工知能):採用プロセスにAIを活用することで、人間の持つ偏見や差別をできるだけ排除することができるようにならないか?

Blockchain:ブロックチェーンをの改竄不能性や、真正性確認の特長を使って、LGBTの人達を傷つけたり貶めたりする怪文書、偽文書を撲滅できないか?

これらは、現時点ではアイディアでしかありませんが、そのほかにもITが貢献できることはあるはずです。

日本においては、LGBTどころか男女や外国籍の人達のダイバーシティ対応すら不十分な会社も多く、こういう新しい取り組みは壁にぶつかったり、疲弊することも多いのが現状です。しかし、小さくても、少しずつでも進めていけば、いつの日か、違う種類の人達が身近にいることを誰もが当たり前に受け入れられるようになっていくと考えています。

なぜ、「パンゲア 2.0」を始めるのか?

 

昨日(1月12日)、インフォテリアは「パンゲア 2.0」というスタートアップ支援プログラムのスタートを発表しました。このプログラムは報道発表にもあるように、世界を目指すスタートアップを支援する制度です。その内容は、報道発表を読んでいただくとして、ここでは何故このようなプログラムを始めるのかをお話ししましょう。

その理由は一言で言うと「恩送り」。話は、インフォテリアの創業時、いまから18年ほど前に遡ります。インフォテリアは、多摩川の河川敷の近くの六畳一間のアパートで創業しました。その時に問題になったのが、お客様との商談や、採用面談の場所でした。スタートしてすぐの資金のない会社にとって、交通の便の良い山手線沿線の会議室を借りるお金は無いし、喫茶店のような場所は企業向け製品の商談にはカジュアル過ぎました。

その時に、五反田駅のすぐ近くにあった私の前職の会社に、会議室とワークスペース(机、椅子、ネットアクセスなど)を1年間無償で提供していただいたのです。これには、本当に助かりました。お客様や、採用面談のためだけでなく、メディアからの取材や、投資家との打ち合わせなどにも使わせてもらいました。さらには、セミナールームでの製品説明会や記者会見も行うことができました。これら全てを貸会議室で行っていたら、そのコストは100万円を超えていたのは間違いありません。

インフォテリアは、いまではお陰様で上場も果たし、またオフィスは大井町駅という大変便利の良い駅(知ってましたか?)から徒歩3分のところに立地しています。昨年10月に、オフィスを大幅に増床し「IoT Future Lab.」(略称:イフラボ)を開設したことで、会議室、セミナールーム、コワーキングペースも広がりました。そこで、このスペースをスタートアップの皆さんにも無償提供し、インフォテリアが以前受けた「恩」を送りたいと考えたのです。

登録の条件は、「世界を目指すスタートアップ企業」であること。私たちとしては、特に、インフォテリアが注力をしている分野、例えば、IoTやブロックチェーン関係の企業を歓迎します。また、東京に拠点がない地方の企業も歓迎します。

実は「2.0」の名称が示す通り、このプログラムは、以前から提供しているプログラムのバージョンアップ版です。以前は、提供できるスペースも決して広くはなかったのですが、今回が総面積で530㎡のスペースが対象と大幅にアップグレード。さらには、私や社外取締役であるAnis Uzzamanへの経営相談、交流を促進する月に1回のワインパーティなどの新プログラムも用意しました。

大幅にバージョンアップされた「パンゲア 2.0」では、全体のディレクションを行うディレクターとして株式会社54代表取締役の山口豪志氏を招聘し、いまどきのスタートアップのニーズに合った展開をしていきます。新規登録の第1号企業として、株式会社Tears Switchを紹介しましたが、総数20社程度を支援することができればと考えています。また、インフォテリアとしては「恩送り」が主旨ではありますが、このような熱気溢れるスタートアップの人達と接点が増えることで、私たちの「発想と挑戦」への刺激がもらいたいと副次的な効果も期待しています。

最後に「パンゲア」の名前は、現在の5つの大陸に別れる前の原始大陸の名称です。私たちは、「パンゲア」から、五大陸で活躍するスタートアップが生まれることを期待しています。